University of Minnesota Human Rights Center

第九部 国際協力及び司法共助

第八六条 (一般的協力協議)

 締約国は、この規程に従って、裁判所の管轄に属する犯罪の捜査及び訴追において、裁判所に十分協力しなければならない。

第八七条(協力の要請:一般規定)

(a) 裁判所は、締約国に対し協力を要請する権限を有する。その要請は、外交経路、又は各締約国が批准、受諾、承認若しくは加入の際に指定するその他の適当な経路を通じて送付されなければならない。この指定の後の変更は、各締約国により手続き及び証拠に関する規則従って行わなければならない。

(b) (a)の規定を害することなく、適当な場合には、要請は、国際刑事警察機構又は適当な地域的機関を通じて送付することができる。

2 協力要請及び要請の疎明資料は、被要請国が批准、受諾、承認又は加入の際に行った選択に従って、被要請国の公用語若しくは裁判所の使用言語の一つによるか又その言語への翻訳が添付されているかいずれかでなけばならない。

  この選択の変更は、手続き及び証拠に関する規則にしたがって行われなければならない。

3 被要請国は、要請の実施に必要な限度での開示を除き、協力要請及び要請の疎明資料の秘密を保持しなければならない。

4 裁判所は、第九部に基づいて提起される援助の要請に関しても、被害者、潜在的な承認及びその家族の安全又は肉体的若しくは精神的福祉を確保するために必要な措置(情報の保護に関する措置を含む。)をとることができる。裁判所は、第九部に基づいて利用可能とされた情報も、被害者、潜在的な承認及びその家族の安全及び肉体的又は精神的福祉を保護する方法で提供され、取り扱われるよう要請することができる。


(a) 裁判所は、非締結国に対して、特別の取決め、当該非締結国との合意又はその他の適当な根拠に基づいて、この第九部に基づく援助を提供するよう求めることができる。

(b) 裁判所と特別取決め又は合意を締結した非締約国がそのような取決め又は合意に従って要請に協力しない場合には、裁判所は、締約国令議又は、安全保障理事令が事案を裁判所に付託したときは、安全保障理事令に、その旨を通報することができる。

6 裁判所は、政府間機関に対して情報は文書の提供を求めることができる。裁判所は、そのような機関との間の合意に基づき、かつ、機関の権能又は権限に反しない他の形態の協力及び援助を求めることができる。

7 締約国がこの規程の諸規定に反して裁判所による協力要請に従わず、それによってこの規程に基づく裁判所の職務及び権限の行使を妨げた場合には、裁判所は、その旨の認定を行い、締約国令議又は、安全保障理事令が事案を付託した場合には、安全保障理事令に、この問題を付託することができる。

第八八条(国内法の手続きの利用)

 
締約国は、第九部に規定されたすべての形態の協力のために、国内法上利用可能な手続きが存在するよう確保しなければならない。

第八九条(裁判所への人の引渡)

1 裁判所は、人が領域内に発見されることがある国に対して、第九一条に定められた疎明資料とともにそのものの逮捕及び引渡の要請を送付することができ、その者の逮捕及び引渡について当該国の協力を要請しなければならない。締約国は、第九部の諸規定及び国内法上の手続きに従って、逮捕及び引渡しの要請に応じなければならない。

2 引渡を求められている者が第二〇条に規程された一事不再理の原則に基づいて国内裁判所に異議申立てを提起した場合には、被要請国は、許容性に関する関連決定が存在しているか否かを決定するため直ちに裁判所と協議しなければならない。事件が許容される場合には、被要請国は、要請の実施を勧めなければならない。許容性についての裁定が未だ出ていない場合には、被要請国は、裁判所が許容性についての裁定が未だに出ていない場合には、被要請国は、裁判所が許容性について決定を下すまで、その者の引渡要請の実施を延期することができる。


(a) 締約国は、他国により裁判所へ引き渡される者の時領域内の郵送を、自国の手続き法に従って許可しなければならない。但し、自国の通過が引渡を妨げ又は遅延させる場合は、この限りではない。

(b) 裁判所による通過の要請は、第87条に従って送付されなければならない。通過の要請は、次のものを含まなければならない。

(ⅰ) 移転される者の特徴

(ⅱ) 事件の事実及び法的性格の概要、及び

(ⅲ) 逮捕及び引渡令状

(c) 郵送される者は、通過の期間中拘束される。

(d) その者が空路で輸送され、通過国の領域への着陸を予定していない場合には、許可は必
要ではない。

(e) 通過国領域内で予定外の着陸が起きた場合には、その国は、裁判所から(b)に規定された通過要請を求めることができる。通過国は、通過の要請が受領され、通過が行われるまで、移送される者を抑留しなければならない。この(e)の規定のための抑留は、予定外の着陸の時点から96時間を越えることができない。但し、その時間内に要請が受領されるときは、この限りではない。

4 引渡を求められている者が、被要請国において裁判所への引渡犯罪とは異なる犯罪で刑事手続きの対象となり又は服役している場合には、被要請国は、要請を認める旨の決定をした後に、裁判所と協議しなければならない。

第九〇条(要請の競合)

1 第89条に基づき裁判所から人の引渡の要請を受けていた締約国が、同一人物につき、かつ裁判所がその者の引渡を求めている犯罪の基礎を構成する同一の行為について、他のいずれかの国から国家間取引を求められた場合には、被締約国は、裁判所及び要請国にその事実を通知しなければならい。

2 要請国が締約国であるときは、次の場合には、被締約国は、裁判所からの要請を優先しなければならない。

(a) 裁判所が、第18条又は第19条に従って引渡が求められている事件が許容される旨の決定を行い、かつその決定が要請国の国家間引渡の要請について要請国より行われる捜査又は訴求を考慮に入れる場合、又は

(b)裁判所が、1の規定に基づく被要請国の通知にしたがって(a)に定める決定を行う場合

3 2(a)の規定に基づく決定が下されない場合には、被要請国は、2(b)の規定に基づく裁判所の決定が下されるまでの間は、自らの裁量により被要請国から国家間取引の要請の処理に着手することができるが、裁判所が事件不許容と決定するまでは、その者の国家間引渡を行ってはならない。裁判所の決定は、迅速に下されなければならない。

4 要請国がこの規程の非締約国である場合には、被要請国に国家間取引を行う国際的な義務を負っていないときは、事件が許容できる旨の決定を裁判所が下しているならば裁判所からの引渡要請を優先しなければならない。

5 4の規定に基づいて、事件が裁判所によって許容できると決定されていない場合には、被要請国は、自らの裁量により要請国からの国家間引渡の要請の処理に着手することができる。

6 被要請国がこの規程の非締約国である要請国に対してその者の国家間引渡を行う現行の国際義務を負っていることを除いて4の規定が適用される場合には、被要請国は、その者を裁判所に引き渡すか要請国への国家間引渡を行うかを決定しなければならない。その決定を下すに当たり、被要請国は、次の事項を含む(但し、それらに限定されない。)すべての関連要素を考慮しなければならない。

(a) 要請のそれぞれの日付

(b) 要請国の利害(関連する場合には、犯罪が要請国の領域で行われたか否か、並びに被害者及び引渡を求められている者の国籍を含む。)、及び

(c) 裁判所と要請国との間で後に引渡が行われる可能生

7 裁判所から人の引渡要請を受けた締約国が、裁判所がその者の引渡を求めている犯罪を構成する行為とは別の行為について、いずれかの国から同一人物の国家間引渡の要請を受けた場合には、

(a) 被要請国は、要請国にその者の国家間引渡を行う現行の国際義務を負っていない場合には、裁判所からの要請を優先しなければならない。

(b) 被要請国は、要請国にその者の国家間引渡を行う現行の国際義務を負っている場合には、その者を裁判所に引き渡すか又は要請国への国家間国家間引渡を行うかを決定しなければならない。その決定を下すに当たり、被要請国は、6の規定に揚げた事項を含む(但し、それらに限定されない。)すべての関連要素を考慮しなければならないが、問題となっている行為の相対的性質及び重大性に特別の考慮をしなければならない。

8 本条に基づく通知に従って裁判所が事件を不許容と決定し、その後に要請国への国家間引渡を拒否した場合には、被要請国は、その決定を通知しなければならない。

第九一条(逮捕及び引渡要請の内容)

1 逮捕及び引渡の要請は、書面で行わなければならない。緊急の場合には、要請が第87条1(a)に規定された経路を通じて確認されることを条件として、書面による登録を伝達できる媒体により要請を行うことができる。

2 第58条に基づき予審裁判部によって逮捕状が発行させられた者の逮捕及び引渡の要請の場合には、要請は、次の事項を含むか、又は次の事項が疎明資料として添付されなければならない。

(a) 引渡を求められている者の確認のために十分なその者の特徴を示す情報及びその者の予想される所在地に関する情報

(b) 逮捕状の写し、及び

(c) 被要請国における引渡手続の要請を満たすために必要な文書、陳日書又は情報。但し、それらの要件は、被要請国と他国との間の条約又は協定に従った国家間引渡の要請に適用可能な要件により厳しいものであってはならず、また可能な場合には裁判所の特性を考慮してより軽いものなければならない。

3 既に有罪の判決をうけた者の逮捕及び引渡の要請の場合には、その要請は、次の事項を含むか、又は次の事項が疎明資料として添付されなければならない。

(a) その者の逮捕状の写し

(b) 有罪判決の写し

(c) 引渡を求められている者が有罪判決の対象者であることを証明する情報、及び

(d) 引渡を求められている者が刑の言渡しを受けた者である場合は、判決書の写し、及び拘禁刑の言渡しを受けた場合には、既に服役した期間及び残刑の期間に関する記述。

4 裁判所の要請を受けたときは、締約国は、2(c)の規定に基づいて適用できる自国の国内法上の要件について、一般的に又は特定の事項に関して、裁判所と協議しなければならない。協議の間、当該締約国は、自国の国内法上の特定の要件について裁判所に助言しなければならない。

第九二条(仮逮捕)

1 緊急の場合には、裁判所は、引渡請求及び第91条に定める疎明資料の提出までの間、引渡を求められる者の仮逮捕を要請することができる。

2 仮逮捕の要請は、書面の記録を伝達できる媒体によって行い、かつ、次の事項を含まなければならない。

(a) 引渡を求められる者の確認のために十分なその者の特徴を示す情報及びその者の予想される所在地に関する情報

(b) その者の逮捕が求められている犯罪、及び犯罪を構成すると申立てられている事実(可能な場合には犯罪の日付及び場所を含む)の簡潔な記述

(c) 引渡を求められる者に対する逮捕状又は有罪判決の存在に関する陳述、及び

(d) 仮逮捕を求められている者の引渡の要請が迫って行われることの陳述。

3 被要請国が第91条に定める引渡要請及び疎明資料を手続及び証拠に関する規則に定める期限内に受領しなかった場合には、仮逮捕された者は釈放される場合には、その者は期間満了前に引渡に同意することができる。そのような場合には、被要請国は、できる限り速やかに裁判所にその者を引き渡す手続きを進めなければならない。

4 仮逮捕されている者が3の規規定に従って釈放されたという事実は、引渡要請及び疎明資料が後日届けられた場合にその者の後の逮捕及び引渡を妨げるものではない。

第九三条(他の形態の協力)

1 締約国は、第9部の諸規定及び国内法の手続きに従って、捜査又は訴追に関連する次に掲げる裁判所の援助要請に応じなければならない。

(a) 人の身元確認及び所在確認、又は物の所在確認

(b) 証拠(宣誓下の証言を含む。)の収集、及び証拠の提出(裁判所に必要な鑑定人の意見及び報告書を含む。)

(c) 捜査又は訴追されている者の取調べ

(d) 文書(裁判所文書を含む。)の送達

(e) 証人又は鑑定人としての人の裁判所への任意出頭の促進

(f) 7の規定に定める一時的移送

(g) 場所又は現場の検証(墓地の発掘及び調査を含む。)

(h) 捜査及び押収の実施

(i) 記録及び文書(公式文書及び公式文書を含む。)の提供

(j) 被害者及び証人の保護、並びに証拠の保全

(k) 善意の第三者の権利を害することなく、将来の没収のために、犯罪、犯罪の収益、財産、資産及び提供物の特定、追跡並びに凍結又は押収、及び

(l) 裁判所の管轄に属する犯罪の捜査及び訴訟を促進するために、被要請国の法により禁止されていない類型の援助

2 裁判所は、裁判所に出頭する証人又は鑑定人に対して、被要請国を出頭する以前のその者の作為又は不作為について、訴追、抑留又はいかなる個人的自由の制限も受けないことを保証する権限を有する。

3 1の規定に基づき提出された要請に詳細に述べられていた特別の援助措置の実施が、一般的に適用される現行の基本的な法原則を根拠として被要請国において禁止されている場合には、被要請国は、問題の解決を速やかに裁判所と協議しなければならない。協議にあたり、援助が別の態様又は条件付きで行いうるか否かに考慮を払うものとする。協議後も問題が解決できない場合に裁判所は、要請に必要な修正を加えなければならない。

4 第72条に従って、締約国は、要請が自国の国家安全保障に関連する文書の提出又は証拠の開示に関わる場合にのみ、援助要請を全部又は一部拒否することができる。

5 1(1)の援助要請を拒否する前に締約国は、援助が特定の条件付きで与えられうるか否か、又は援助が後日若しくは別の様態で与えられうるか否かを考慮しなければならない。但し、裁判所又は検察官が条件付で援助を受け入れられる場合には、裁判所又は検察官は遵守しなければならない。

6 援助の要請が拒否される場合には、被要請国は、速やかに裁判所又は検察官にその拒否の理由を通知しなければならない。


(a) 裁判所は身元確認のため、又は若しくはその他の援助を得るために、拘束された者の一時的な移送を要請することができる。その者は、次の条件が満たされた場合に移送さえることができる。

(ⅰ) その者が移送について十分な説明を受けた上で、自由意思で同意すること、及び

(ⅱ) 被要請国が、被要請国と裁判所が合意する条件として、移送に同意すること。

(c) 移送される者は引続き拘束されなければならない。移送の目的が果たされたときには、裁判所は、遅滞なく被要請国にその者を送還しなければならない。


(a) 裁判所は、要請に述べられた捜査及び手続きに必要とされる場合を除き、文書及び情報の秘密を保持しなければならない。

(b) 被要請国は、必要なときは、検察官に文書又は情報を秘密の方式で送付することができる。検察官は、それらの新たな証拠の発見のためだけに用いることができる。

(c) 被要請国は、自発的に又は検察官の要請があったときには、文書又は情報の開示に後に同意することができる。その後に当該情報は、第5部及び第6部の諸規定に従って、かつ手続き及び証拠に関する規則に従って、証拠として使用することができる。


(a)

(ⅰ) 締約国が裁判所及び国際的な義務に従って他国から、引渡又は国家間引渡以外の競合する要請を受けた場合には、当該締約国は、裁判所及び要請国と協議に上、必要ならばいずれか一方の要請又はそれに条件を付けることにより、両方の要請に応じるように努力しなければならない。

(ⅱ) それができない場合いは、競合する要請は、第90条に定められた原則にしたがって解決されなければならない。

(b) 但し、裁判所からの要請が第三国又は国際的な協定に基づき国際機関の管理下にある情報、財産又は人に関するものである場合には、被要請国は、その旨裁判所に通知し、裁判所は要請を当該第三国又は国際機関に対して行なわれなければならない。

10

(a) 裁判所は、要請を受けたときには、裁判所の管轄に属する犯罪を構成する行為又は要請国の国内法上の重大な犯罪を構成する行為に関して、捜査又は公判を行なっている締約国に協力し援助を与えることができる。

(b)

(ⅰ) (a)に定める援助には、特に次のものを含む。

a 裁判所により行なわれた捜査又は公判の過程で得られた陳述、文書又はその他の証拠の送付、及び

b 裁判所の命令によって抑留されている者の取調べ

(ⅱ) (b)(ⅰ)aに基づく援助の場合には、

a 文書又は他の型の証拠が、1国の援助により取得されたときは、その送付には当該国の同意を要する。

b 陳述、文書又は他の証拠が証人または鑑定人により提供されたものであるときは、その送付は、第68条の規定に従わなくてはならない。

(c) 裁判所は、この項に定められた条件に基づいて、非締約国たる国からこの規定に基づく要請を認めることができる。

第九四条(進行中の捜査又は訴追に関する要請の実施延期)

1 要請の即時の実施が、要請に関わる事件とは異なる事件の進行中の捜査又は訴追を妨げる場合には、被要請国は、裁判所と合意した期間の間、当該要請国の実施の延期することができる。但し、この延期は、被要請国における関連の捜査または訴追を終了するために必要な期間を超えてはならない。延期の決定を行う前に、被要請国は、援助が一定の条件の下で直ちに与えられうるか否か検討しなければならない。

2 1の規定に従って延期の決定が行なわれた場合であっても、検察官は、第93条1(j)に従って、証拠保全の措置を求めることができる。

第九五条(許容性に関する異議申し立てに関する要請の実施証拠)

  第18条又は第19条に従って許容性に関する異議申し立てが裁判所によって検討されている場合には、被要請国は、第9部に基づく要請の実施を裁判所の決定があるまで延期するこができる。但し、第18条又は第19条に従って検察官は証拠の収集を続行することができる旨裁判所が特に命令した場合は、この限りではない。

弟九六条(許容性に関する異議申し立てに関する要請の実施証拠)

1 第93条に定められた他の形態の援助要請は、書面で行なわれなければならない。緊急の場合には、要請とは、書面の記録を伝達できる媒体により行なうことができる。但し、第87条1(a)に定められた経路を通じて、要請が確認されることを条件とする。

2 要請は、適用可能な場合には、次の事項を含めるか又は次の事項が疎明資料として添付されなければならない。

(a) 要請の目的及び求められている援助(要請の法的根拠及び理由を含む)の簡潔な記述

(b) 求められている援助が与えられているために発見され又は確認されなければならない人若しくは場所の所在又は確認に関するできる限り詳細な情報

(c) 要請の基礎である基本的な事実の簡潔な記述

(d) 従うべき手続き又は要件の理由及び詳細

(e) 要請を実施するために被要請国の国内法上要求されることのある情報、及び

(f) 求められている援助が与えられるために、関連する他の情報

3 裁判所の要請を受けたならば、締約国は、2(e)の下で適用される自国の国内法上の要件に関し、一般的に又は特定の事項について裁判所と協議しなければならない。その協議中、締約国は、裁判所に自国の国際法上の特定の要件について助言しなければならない。

4 本条の規定は、適用可能な場合には、裁判所に対して行なわれる援助要請についても適用しなければならない。

第九七条(協議)

  締約国は、第9部に基づく要請を受理し、当該要請国との関連でその実施を妨げうる問題を確認した場合には、当該国は、問題を解決するために遅滞なく裁判所と協議しなければならない。そのような問題には、特に、次のものが含まれる。

(a) 要請を実施するための情報が不十分なこと。

(b) 引渡請求の場合には、最大限の努力にも関わらず、求められている者の所在が見つからないとう事実、又は捜査の結果、被要請国にいるものが明らかに令状に指名された者ではないことが判明したという事実、又は

(c) 現在の形態での要請が、被要請国に他国との関係で負った既存の条約上義務に違反するよう要求することになるという事実

第九八条(特権免除の放棄及び引渡への同意に関する協力)

1 裁判所は、被要請国に対して、第三国の人又は財産の国家免除又は外交特権免除に関することになる、引渡又は援助要請については手続きを進めることができない。但し、裁判所があらかじめ免除の放棄のための当該第三国の揚力を得る場合は、この限りではない。

2 裁判所は、被要請国に対して、派遣国の者を裁判所に引き渡すにはその派遣国の同意が必要とされる国際協定上の義務に反して行動するようになる、引渡の要請については、手続きを進めることができない。但し、裁判所があらかじめ引渡に同意を与えるための当該派遣国の協力を得る場合は、この限りではない。

第九九条(第93条及び第96条に基づく要請の実施)

1 援助要請は、被要請国の国内法上の関連手続きに従って、かつそのような法により禁止されない限り要請の中特で定された方法(要請で指定された手続きに従うこと又は要請の中で特定された者を実施過程に立会わせ、補助することを許容することを含む。)で、実施されなければならない。

2 緊急の要請の場合には、要請に応じて提供される文書又は証拠は、裁判所の要請があったときは緊急に送付しなければならない。

3 被要請国からの回答は、原初の言語及び形式送付しなければならない。

4 第9部の他の条項を害することなく、強制措置をとることなく実施しうる要請(特に、要請実施に不可欠のときに被要請国の当局の立会いなく行う場合も含めた人の任意の事情聴取又は取調べ、及び公衆の場所現状の改革を伴わない検証を含む。)の実効的な実施のために必要な場合には、検察官は、次のように1国の領域において当該要請を直接実施することができる。

(a) 要請を受けた締約国がその領域において犯罪が行なわれたと申立てられた国であり、第18条又は第19条に従って許容性の決定が行なわれた場合には、検察官は、要請を受けた締約国と可能なすべての協議を行った後、直接に当該要請を実施することができる。

(b) その他の場合には、検察官は、要請を受けた締約国と協議を行った後、当該締約国の提起をする合理的な条件又は懸念に従うことを条件として、当該要請を実施することができる。この(b)の規定に従った要請の実施ついて要請を受けた締約国が問題があると認めた場合には、当時国は、問題を解決するために遅滞なく裁判所と協議しなけばならない。

5 第72条に基づき裁判所による管理又は取調べを受けた者が国家安全保障に関連する機密情報の開示を防止することを意図した制限を援用することを許容する諸条項は、本条に基づく援助要請の実施についていても適用する。

第一〇〇条(費用)

1 被要請国領域において行なわれる要請実施のための通常費用は、裁判所により負担される次のものを除いて、被要請国が負担する。

(a)証人及び鑑定人の旅行及び安全、並びに第93条に基づく拘束された者の移送に伴う費用

(b) 翻訳、通訳及び謄本の費用

(c)裁判所、検察官、福検察官、書記、副書記及び裁判所のいずれかの機関の職員の旅費及び日当

(d) 裁判所により要請された鑑定人の意見又は報告者の費用

(e) 拘禁国により裁判所引き渡される者の移送に伴う費用、及び

(f)協議の後、要請の実施から生ずるいずれかの臨時費用

2 1の規定は、適当な場合には、締約国から裁判所に対する要請にも通用する。その場合には、裁判所が実施の通常費用を負担する。

第一〇一条(特定主義)

1 この規程に基づき裁判所に引き渡され他者は、その者が引渡の理由である犯人の基礎構成する行為又は一連の行為以外の、引渡の前に行なわれたいかなる行為についても、訴追され、処罰され又は抑留されてはならない。

2 裁判所は、裁判所にその者を引き渡した国に対して、1の規定の要件の放棄を求めることができ、必要であれば、裁判所は第91条に従って、追加情報を提供しなければならない。締約国は、裁判所に対して放棄する権利がり、また放棄するように努力するものとする。

第一〇二条(擁護の定義)

この規程の適用上、

(a) 「引渡」とは、この規程に従って一国が裁判所に人を引き渡すことをいう。

(b) 「国家間引渡」とは、条約、多数国間条約又は国内立法に基づき、一国から他国に人引き渡すことをいう。


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