University of Minnesota

 

国際連合憲章に従った国家間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言
(友好関係原則宣言)[抄]
Declaration on Principles of International Law concerning Friendly Relations and Co-operation among States in accordance with the Charter of the United Nations

採択 一九七〇年一〇月二四日国連総会決議二六二五(XXV)

総会は、・・・・・(省略)

一 以下の原則を厳粛に宣言する。

国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならないという原則

いずれの国も、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない義務を負う。このような武力による威嚇又は武力の行使は、国際法及び国際連合憲章に違反するものであり、国際紛争を解決する手段としては決して使用してはならない。
侵略戦争は平和に対する罪を構成するものであり、それにたいしては国際法上の責任が生ずる。
国際連合の目的及び原則に従って、国は、侵略戦争の宣伝を慎む義務を負う。
いずれの国も、他国の現在の国際国境線を侵すため、また領土紛争及び国境問題を含む国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇又は武力の行使を慎む義務を負う。
いずれの国も同様に、自国が当事国であるか又は他の理由により尊重義務を負う国際協定により又は同協定に従って確定された休戦ラインなどの国際的境界線を侵すため、武力による威嚇又は武力の行使を慎む義務を負う。前記のいかなる部分も、関係当事国の特別の制度に基づく国際的境界線の地位及び効果に関して、かれらの立場をそこなうものと解釈してはならず、また、それらの暫定的性格に影響を及ぼすものと解釈してはならない。
国は、武力行使をともなう復仇行為を慎む義務を負う。
いずれの国も、同権及び自決の原則の作成にあたり言及された人民から自決及び自由並びに独立を奪う、いかなる強制行動をも慎む義務を負う。
いずれの国も、他国の領域に侵入させる目的をもって、傭兵を含む不正規軍又は武装集団を組織し、また、その組織を奨励することを慎む義務を負う。
いずれの国も、他国において内戦の行為又はテロ行為を、組織し、教唆し、援助し又はそれらに参加すること、また、かかる行為の実行に向けられた自国領域内における組織的活動を黙認することを、上の行為が武力による威嚇又は武力の行使をともなう場合には、慎む義務を負う。
国の領域は、憲章の規定に違反する武力の行使の結果生ずる軍事占領の対象としてはならない。国の領域は、武力による威嚇又は武力の行使の結果生ずる他国による取得の対象としてはならない。武力による威嚇又は武力の行使の結果生ずるいかなる領土取得も、合法的なものとして承認してはならない。前記のいかなる部分も、次のものに影響を及ぼすものと解釈してはならない。
(a) 憲章の規定、若しくは憲章の制度以前のいずれかの国際的合意であって、国際法上有効なもの、
又は
(b)憲章に基づく安全保障理事会の権限

すべての国は、効果的な国際管理のもとにおける全面完全軍縮に関する一般条約の早期締決のため誠実に交渉を行わなければならず、また、国際緊張を和らげ、かつ国家間の信頼を強めるため適当な措置をとるよう努力しなければならない。
すべての国は、国際の平和及び安全の維持に関する国際法の一般に承認された原則及び規則に基づく義務に誠実に従わなければならず、また、憲章に基づく国際連合の安全保障体制をより効果的にするために努力しなければならない。
前記パラグラフのいかなる部分も、武力の行使が合法的である場合に関する憲章の規定の範囲をいかなる方法においても拡大し又は縮小するものと解釈してはならない。

国は、国際紛争を、国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように平和的手段によって解決しなければならないという原則

いずれの国も、他国との国際紛争を、国際平和及び安全並びに正義を危うくしないように平和的手段によって解決しなければならない。
したがって、国は、国際紛争を、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的機関又は地域的取極の利用、その他自らが選ぶ平和的手段によって、すみやかにかつ公正に解決するよう求めなければならない。こうして解決を求めるにあたって、当事国は事情及び紛争の性質に適した平和的手段について合意しなければならない。
紛争当事国は、前記の平和的手段のいずれか一つによって解決に到達しない場合には、かれらが合意する他の平和的手段によって紛争の解決を引き続いて求める義務を負う。
国際紛争の当事国、並びに他の国は、国際の平和及び安全の維持を危うくしないように、事態の悪化をもたらしうるいかなる行為も慎まなければならず、国際連合の目的及び原則に従って行動しなければならない。
国際紛争は、国の主権平等を基礎として、かつ手段の自由な選択の原則に従って解決しなければならない。自らが当事者である現在の若しくは将来の紛争に関して、国が自由に合意する解決手続に訴えたり又はそれを受諾することは、主権平等に両立しないものとみなしてはならない。
前記パラブラフのいかなる部分も、憲章の適用可能な規定、とりわけ国際紛争の平和的解決に関する規定を害したり又はそれから逸脱するものではない。

憲章に従って、いずれの国の国内管轄権内にある事項にも干渉しない義務に関する原則

いかなる国又は国の集団も、理由のいかんを問わず、直接又は間接に他国の国内問題又は対外問題に干渉する権利を有しない。したがって、国の人格又はその政治的、経済的及び文化的要素に対する武力干渉その他すべての形態の介入又は威嚇の試みは、国際法に違反する。
いかなる国も、他国の主権的権利の行使を自国に従属させ又は他国から何らかの利益を得る目的で他国を強制するために、経済的、政治的その他いかなる形の措置も使用してはならず、またその使用を奨励してはならない。また、いかなる国も、他国の政体の暴力的転覆に向けられる破壊活動、テロ活動又は武力行動を組織し、援助し、助長し、資金を与え、扇動し又は、黙認してはならず、また、他国の内戦に介入してはならない。
人民からその民族的同一性を奪うための武力の行使は、人民の不可譲の権利及び不干渉の原則を侵害するものである。
いずれの国も、他国によるいかなる形態の介入も受けずに、その政治的、経済的、社会的及び文化的体制を選択する不可譲の権利を有する。
前記パラグラフのいかなる部分も、国際の平和及び安全の維持に関する憲章の関係規定に影響を及ぼすものと解釈してはならない。

憲章に従って相互に協力すべき国の義務

国は、その政治的、経済的及び社会的体制の相違にかかわらず、国際の平和及び安全を維持し、また、国際経済の安定及び発展、諸国の一般的福祉並びに前記の相違に基づく差別をともなわない国際協力を促進するために、国際関係のさまざまの分野において相互に協力する義務を負う。
この目的のために、
(a)国は、国際の平和及び安全の維持のために、他国と協力しなければならない。
(b)国は、すべての者の人権及び基本的自由の普遍的尊重と遵守の促進のため、また、あらゆる形態の人種差別及び宗教的不寛容の撤廃のために協力しなればならない。
(c)国は、経済、社会、文化、技術及び通商の分野における国際関係を、主権平等及び不干渉の原則に従って処理しなければならない。
(d)国際連合加盟国は、憲章の関連規定に従って、国際連合と協力して共同の行動及び個別の行動をとる義務を負う。
国は、経済、社会及び文化の分野、並びに科学及び技術の分野において協力しなければならず、また、国際的な文化及び教育の進歩の促進のために協力しなければならない。国は、世界各国における経済成長、とりわけ発展途上国の経済成長の促進のために協力しなければならない。

人民の同情及び自決の原則

国際連合憲章にうたわれた人民の同権及び自決の原則によって、すべての人民は、外部からの介入なしに、その政治的地位を自由に決定し、その経済的、社会的及び文化的発展を追求する権利を有する。いずれの国も憲章の規定に従ってこの権利を尊重する義務を負う。
いずれの国も、共同の行動及び個別の行動を通じて、憲章の規定に従って、人民の同権及び自決の原則の実現を促進し、また、
(a)国家間の友好関係及び協力を促進すること、並びに、
(b)当該人民の自由に表明した意思に妥当な考慮を払って、植民地主義を早急に終了させること、
を目的として、かつ、外国による征服、支配及び搾取への人民の服従は、この原則に違反し、また基本的人権を否認するものであり、したがって憲章に違反するものであることに留意して、この原則の実施に関して憲章により委託された責任を遂行することについての国際連合に援助を与える義務を負う。
いずれの国も、共同の行動及び個別の行動を通じて、憲章に従って人権及び基本的自由の普遍的尊重と遵守を促進する義務を負う。
主権独立国家の確立、独立国家との自由な連合若しくは統合、又は人民が自由に決定したその他の政治的地位の獲得は、当該人民による自決権の行使の諸形態を構成する。
いずれの国も、この原則の作成にあたって上に言及された人民から自決権並びに自由及び独立を奪ういかなる強制行動をも慎む義務を負う。かかる人民は、自決権行使の過程で、こうした強制行動に反対する行動をし、また抵抗をするにあたって、憲章の目的及び原則に従って援助を求めかつ受ける権利を有する。
植民地その他非自治地域は、憲章上、それを施政する国の領域とは別個のかつ異なった地位を有する。憲章に基づくこうした別個のかつ異なる地位は、植民地又は非自治地域の人民が、憲章とりわけその目的及び原則に従って自決権を行使するまで存続するものとする。
前記パラグラフのいかなる部分も、上に規定された人民の同権及び自決の原則に従って行動し、それゆえ人種、信条又は皮膚の色による差別なくその領域に属する人民全体を代表する政府を有する主権独立国家の領土保全又は政治的統一を、全部又は一部、分割又は毀損しうるいかなる行動をも承認し又は奨励するものと解釈してはならない。
いずれの国も、他のいかなる国又は領域の民族的統一及び領土保全の一部又は全部の分断を目的とするいかなる行為をも慎まなければならない。

国の主権平等の原則

すべての国は主権平等である。すべての国は、経済的、社会的、政治的その他性質の相違にかかわりなく、平等の権利を有し、義務を負い、国際社会を平等に構成する。
とりわけ、主権平等は次の各要素を含む。
(a)国は、法律上平等である。
(b)各国は、完全な主権に固有の権利を享受する。
(c)各国は、他国の人格を尊重する義務を負う。
(d)国の領土保全及び政治的独立は、不可侵である。
(e)各国は、その政治的、社会的、経済的及び文化的体制を自由に選択し発展させる権利を有する。
(f)各国は、その国際的義務に完全にかつ誠実に従い、また、他国と平和に生存する義務を負う。

国は、憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならないという原則

いずれの国も、国際連合憲章に従って負っている義務を誠実に履行する義務を負う。
いずれの国も、国際法の一般に承認された原則及び規則に基づく義務を誠実に履行する義務を負う。
いずれの国も、国際法の一般に承認された原則及び規則のもとで、有効な国際的合意に基づく義務を誠実に履行する義務を負う。
国際的合意から生ずる義務と国際連合加盟国の国際連合憲章に基づく義務とが抵触するときは、憲章に基づく義務が優先する。

一般的部分

二 以下のことを宣言する。

前記の諸原則は、その解釈及び適用に関しては相互に関係しており、各原則は他の原則との関連において解釈しなければならない。
この宣言のいかなる部分も、憲章の規定、又は憲章に基づく加盟国の権利義務、又は憲章に基づく人民の権利を、この宣言にこれら諸権利が定められていることを考慮に入れて、いかなる方法によってもそこなうものと解釈してはならない。

三 さらに以下のことを宣言する

この宣言に定められた憲章の諸原則は、国際法の基本原則を構成するものであり、したがって、それらはすべての国が国際的行動をとるにあたりこれら諸原則によって導かれること、また、その相互関係をこれら諸原則の厳格な遵守を基礎として発展させることを訴えるものである。

出典 「三省堂 解説条約集2005」から抜粋・編集



 


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