University of Minnesota Human Rights Center

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い

又は刑罰に関する条約の選択議定書(拷問等禁止条約選択議定書

 

 

 

 

 

採択 二〇〇二年一二月一八日

国際連合総会五七回会期決議五七/一九九附属書

 

 

 

この議定書の締約国は、

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰が、禁止され、及び、人権の重大な侵害を構成することを再確認し、

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(以下「条約」という。)の目的を達成し、並びに、自由を奪われている者の拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護を強化するためには、一層の措置が必要であると確信し、

条約の第二条及び第一六条が、各国にその管轄の下のあるいかなる領域においても拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰にあたる行為を防止するための効果的な措置をとるように義務づけていることを想起し、

国はそれらの条文を実施する主要な責任を負っていること、自由を奪われている人々の保護と彼らの人権の完全な尊重を強化することはすべてのものが分担する共通の責任であること、並びに、国際実施機関は国内措置を補充し及び強化することを認め、

拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の効果的な防止のためには教育並びに立法的、行政的、司法的その他の措置の結合が必要であることを想起し、

また、世界人権会議が、拷問を除去する努力はまず何よりも防止に努力を集中すべきであると宣言し、並びに、拘禁場所への定期的訪問という防止制度の設立を目的とする条約の選択議定書の採択を要請したことを想起し、

自由を奪われている者の拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護は、拘禁場所に対する定期的訪問に基づいた予防的性格の非司法的によって強化できることを確信して、

次のとおり、協定した。

 

第一部 一般原則

第一条 議定書の目的

この議定書の目的は、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を防止するために、人々が自由を奪われている場所への独立の国際的及び国内的団体による定期的な訪問の制度を設立することである。

 

第二条 拷問等防止小委員会

1 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止に関する小委員会(以下「防止小委員会」という。)を設置し、この小委員会は、この議定書に定める任務を実施する。

2 防止小委員会は、国際連合憲章の枠内で作業を行い、及び、その目的と諸原則並びに自由を奪われた人々の取扱いに関する国際連合の諸規範に導かれる。

3 同様に、防止小委員会は、非公開性、公平性、非選別性、普遍性及び客観性の原則に導かれる。

4 防止小委員会及び締約国は、この議定書の実施について協力する。

 

第三条 国内防止機関

各締約国は、 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止のための一以上の訪問団体(以下「国内防止機関」という。)を国内で設置し、設定し又は保持する。

 

第四条 拘禁場所への訪問

1 各締約国は、この議定書に基づいて、第二条及び第三条に定める機関が国の管轄の下にあるいかなる場所をも訪問することを認め、及び、公の当局による命令、その煽動により又はその同意若しくは黙認により人々が自由を奪われているか又は奪われることのある場所(以下「拘禁場所」という。)を統制する。この訪問は、必要な場合には、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からこれらの人の保護を強化するために行われる。

2 この議定書の適用上、自由の剥奪とは、司法、行政その他の当局の命令により人を自らの意思で離れることを許されない公的又は私的な監禁施設に拘禁し、収監し又は留意するあらゆる形態のものをいう。

 

第二部 防止小委員会

第五条 防止小委員会の委員

1 防止小委員会は、一〇人の委員で構成される。この議定書の五〇番目の批准又は加入の後は、防止小委員会の委員の数は、二五名に増やす。

2 防止小委員会の委員は、徳望が高く、かつ、司法行政の分野、特に刑法、監獄若しくは警察行政又は自由を奪われた者の取扱いに関係のあるさまざまの分野において専門的経験があると認められた者の中から選ばれる。

3 防止小委員会の構成については、衡平な地理的配分並びに締約国の異なる形態の文明及び法体系が代表されるように適正な考慮を払う。

4 また防止小委員会の構成については、平等と非差別の原則に基づき均衡のとれたかたちでジェンダーが代表されるように考慮する。

5 防止小委員会の委員は、同一国の国民から一名とする。

6 防止小委員会の委員は、個人の資格で職務を遂行し、独立、公平でかつ効果的に防止小委員会の職務を遂行できなければならない。

 

第六条 委員の指名   (略)

 

第七条 委員の選挙   (略)

 

第九条 空席の補充   (略)

 

第一〇条 委員会の運営

1 防止小委員会は、役員を二年の任期で選出する。役員は、再選されることができる。

2 防止小委員会は、手続規則を定める。この手続規則には、特に次のことを定める。

  (a) 委員の過半数をもって定足数とする。

  (b) 防止小委員会の決定は、出席する委員が投ずる票の過半数によって行う。

  (c) 防止小委員会は、非公開とする。

3 国際連合事務総長は、防止小委員会の最初の会合を招集する。防止小委員会は、最初の会合の後は、手続規則に定める時期に会合する。防止小委員会及び拷問禁止委員会は、少なくとも年一度は同時に会合をもつ。

 

第三部 防止小委員会の任務

第一一条 防止小委員会の任務

防止小委員会は、次のことを行う。

 (a) 第四条に定める場所を訪問し、及び、自由を奪われている者の拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護について締約国に勧告を行うこと。

 (b) 国内防止機関については、

i) 必要な場合には、国内防止機関の設置について締約国に助言を与え及び援助すること。

ii) 国内防止機関と直接のかつ、必要な場合には、秘密の接触を維持し、その能力を強化するために訓練及び技術的援助を提供すること。

iii)自由を奪われている者の拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護を強化することの必要性とそのために必要な手段についての評価について、国内防止機関に対して、助言し及び援助すること。

iv) 拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰の防止のために国内防止機関の能力と任務を強化するために、締約国に対して勧告を行い及び所見を述べること。

 (c) 拷問を一般的に防止するために、国際連合の諸機関並びにすべての人の拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護を強化するために活動している国際的、地域的及び国内的機関又は組織と協力すること。

 

第一二条 締約国の約束

防止小委員会が第一一条に定める任務を遂行することができるようにするために、締約国は次のことを約束する。

(a) 防止小委員会を自国の領域に受け入れ及びこの議定書の第四条に定める拘禁場所へのアクセスを認めること。

(b) 自由を奪われている者の拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護を強化することの必要性とそのために採用すべき措置について評価するために防止小委員会が要請するすべての関連情報を提供すること。

(c) 防止小委員会と国内防止機関の間の接触を奨励し及びそれに便宜を与えること。

(d) 防止小委員会の勧告を検討し及びとりうる実施措置について防止小委員会と対話を行うこと。

 

第一三条 防止小委員会による訪問

1 防止小委員会は、第一一条に定める任務を遂行するために締約国に対する定期訪問の計画を、最初にくじ引きにより、策定する。

2 協議の後、防止小委員会は、訪問を行うために必要な実務的調整を遅滞なく行うことができるように策定した計画を締約国に通知する。

3 訪問は、防止小委員会の少なくとも二名の委員によって行われる。委員は、必要な場合には、この議定書に定める分野に専門的な経験と知識が証明された専門家であって締約国、国連人権高等弁務官事務所及び国連国際犯罪防止センターの提案に基づいて準備する専門家の名簿から選ばれたものを伴うことができる。名簿の準備のために、締約国は五名以内の自国の専門家を提案する。関係締約国は、特定の専門家を当該訪問に含めることに対して異議を申し立てることができ、その場合には、防止小委員会は、他の専門家を提案する。

4 防止小委員会は、適当と考える場合には、定期訪問の後に短期のフォローアップ訪問を提案することができる。

 

第一四条 防止小委員会のアクセス

1 防止小委員会が任務を遂行することができるするようにするため、この議定書の締約国は、防止小委員会に次のものを提供する。

 (a) 第四条に定める拘禁場所で自由を奪われている者の数、並びに、拘禁場所の数及びその位置に関するあらゆる情報についての無制限のアクセス

 (b) 自由を奪われている者の取扱い並びに拘禁条件に関するあらゆる情報への無制限のアクセス

 (c) 2に従うことを条件として、あらゆる拘禁場所及びその施設及び設備への無制限のアクセス

 (d) 立会人なしに、個人的に又は必要とみなすときには通訳者とともに、自由を奪われている者と非公開で面会し、並びに、関連情報を提供できると防止小委員会が信ずる他の者と非公開で面会する機会。

 (e) 訪問を希望する場所及び面会を希望する者を選択する自由。

2 特定の拘禁場所への訪問に対する異議は、訪問場所における当該訪問の実施を一時的に妨げる国の防衛、公の安全、自然災害又は重大な無秩序に係る緊急で差し迫った理由に基づいてのみ申し立てることができる。締約国は、訪問に異議を申し立てるために、緊急事態の宣言が行われていることそれ事態を援用してはならない。

 

第一五条 制裁の禁止

当局又は職員は、防止小委員会又はその代表に、真実であると虚偽であるとを問わず、情報を通報したことを理由に、人又は組織に対していかなる制裁も命令し、適用し、許可し又は容認してはならず、また、当該の人又は組織は、いかなる他の侵害も受けない。

 

第一六条 防止小委員会の勧告及び報告

1 防止小委員会は、締約国及び、関係のある場合には、国内防止機関に勧告及び所見を非公開で通知する。

2 防止小委員会は、締約国が要請する場合には常に、委員会の報告を、当該国の意見がある場合にはそれを付して、公表する。締約国が報告の一部を公表する場合には、防止小委員会は、報告の全部又は一部を公表することができる。ただし、個人的なデータは、当該個人の明示の同意なしに公表してはならない。

3 防止小委員会は、その活動に関する公開の年次報告を拷問禁止委員会に提出する。

4 締約国が第一二条及び第一四条に従って防止小委員会と協力することを拒否する場合、又は、防止小委員会の勧告に照らして事態を改善する措置をとることを拒否する場合には、拷問禁止委員会は、防止小委員会の要請に基づいて、委員の過半数により、当該締約国が自国の見解を提示する機会をもった後、問題について公開の声明を行うか又は防止小委員会の報告を公表する。

 

第四部 国内防止機関

第一七条 国内防止機関の設置

 各締約国は、遅くともこの議定書又はその批准若しくは加入が効力を生じる一年後に、拷問を防止するための一又は複数の国内防止機関を国内で保持し、指定し又は設置する。この議定書の適用上、中央機関以外の単位が設置する機関は、この議定書の規定に合致すれば国内防止機関として指定することができる。

 

第一八条 国内防止機関の活動の保障

1 締約国は、国内防止機関の機能上の独立並びに当該機関の人員の独立を保証する。

2 締約国は、国内防止機関の専門家が必要な能力及び専門的知識を有することを確保するために必要な措置をとる。締約国は、男女比の均衡をはかり並びに国内の種族的集団及び少数者集団が十分に代表されるよう努力する。

3 締約国は、国内防止機関が機能するために必要な資源を利用できるようにすることを約束する。

4 国内防止機関を設置するときに、締約国は、「人権の促進及び保護のための国内機関の地位に関する原則」に適正な考慮を払う。

 

第一九条 国内防止機関の権限

国内防止機関には、少なくとも次の権限を与える。

(a) 第四条に定める拘禁場所で自由を奪われている者の取扱いを、必要な場合には、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰からの保護を強化するために、定期的に審査すること。

(b) 自由を奪われている者の取扱い及び条件を改善し、並びに、拷問及び他の残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰を防止するために、国際連合の関連する規範を考慮に入れて、関係当局に勧告を行うこと。

(c) 既存の立法又は立法案に関する提案及び所見を提示すること。

 

第二〇条 国内防止機関のアクセス

国内防止機関が任務を遂行できるために、この議定書の締約国は、国内防止機関に次のことを認めることを約束する。

(a) 第四条に定める拘禁場所で自由を奪われている者の数、並びに、拘禁場所の数及びその位置に関するあらゆる情報に着いてのアクセス

(b) 自由を奪われている者の取扱い並びに拘禁条件に関するあらゆる情報へのアクセス

(c) あらゆる拘禁場所及びその施設及び設備へのアクセス

(d) 立会人なしに、個人的に又は必要とみなすときには通訳者とともに、自由を奪われている者と非公開で面会し、並びに、関連情報を提供できると国内防止機関が信ずる他の者と非公開で面会する機会

(e) 訪問を希望する場所及び面会を希望する者を選択する自由

(f) 防止小委員会と、情報を送付し及び会談するために、接触する権利

 

第二一条 制裁の禁止及び情報の開示

1 当局又は職員は、真実であると虚偽であるとを問わず、国内防止機関に情報を通報したことを理由に、人又は組織に対していかなる制裁も命令し、適用し、許可し又は容認してはならず、また、当該の人又は組織は、いかなる他の侵害も受けない。

2 国内防止機関が収集した秘密の情報は、開示を拒否できる。個人的なデータは、当該個人の明示の同意なしに公表してはならない。

 

第二二条 国内防止機関の勧告と対話

締約国の権限のある当局は、国内防止機関の勧告を検討し、並びに、可能な実施措置について国内防止機関と対話を行う。

 

第二三条 国内防止機関の年次報告の公表

この議定書の締約国は、国内防止機関の年次報告を公表し及び流布することを約束する。

 

第五部 宣言

第二四条 宣言

1 締約国は、批准の時に、この議定書の第三部又は第四部に定める義務の実施を任期する宣言を行うことができる。

2 この延期は、最大限度三年間有効とする。締約国による適正な陳述及び防止小委員会との協議の後、拷問禁止委員会は、この期間をもう二年間延長できる。

 

第六部 財政条項

第二五条 費用の負担 

1 この議定書の実施のために防止小委員会が要した費用は、国際連合が負担する。

2 国際連合事務総長は、この議定書に基づく防止小委員会の効果的な機能の遂行のために必要な職員及び便宜を与える。

 

第二六条 特別基金

1 締約国の訪問の後に防止小委員会が行う勧告の実施並びに国内防止機関の教育計画のための資金を援助するために、国際連合の財政規則に従って運用される特別の基金を総会の関係手続に基づいて設置する。

2 特別基金は、政府機関、政府間機関、非政府機関及び他の私的又は公的団体が行う自発的拠出により資金を得ることができる。

 

第七部 最終条項

第二七条 署名、批准、加入   (略)

     

第二八条 効力の発生      (略)

 

第二九条 連邦条項

この議定書の規定は、いかなる制限又は例外もなく連邦国のすべての部分に適用される。

 

第三〇条 留保

この議定書にはいかなる留保も付してはならない。

 

第三一条 地域条約との関係   (略)

 

第三二条 ジュネーヴ条約との関係

この議定書の規定は、一九四九年八月一二日の四つのジュネーヴ条約及び一九七七年六月八日のジュネーヴ条約の追加議定書の締約国の義務に影響するものではなく、また、締約国が国際赤十字委員会に対して国際人道法が定めていない状況の下にある拘禁場所を訪問する権限を与える機会を利用することに影響するものでもない。

 

第三三条 廃棄

1 いずれの締約国も、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、いつでもこの議定書を廃棄することができ、通告の後、国連事務総長は、この議定書及び条約の他の締約国に通知する。廃棄は、同事務総長が通告を受領した日の後一年で効力を生ずる。

2 廃棄は、廃棄が効力を生ずる日前に発生する行為若しくは状態、又は、防止小委員会が当該締約国についとることを既に決定し若しくは決定する措置については、締約国をこの議定書に基づく義務から免除する効果を有さず、また、廃棄は、廃棄が効力を生ずる日前に防止小委員会が既に検討を行っていた事案を引き続き検討することを妨げない。

3 締約国の廃棄が効力を生ずる日の後、防止小委員会は、当該国に関する新しい事案の検討を開始してはならない。

 

第三四条 改正   (略)

 

第三五条 特権免除   (略)

防止小委員会及び国内防止機関の委員は、独立した任務の遂行のために必要な特権及び免除を与えられる。防止小委員会の委員は、一九四六年二月一三日の国際連合の特権及び免除に関する条約の第二三条の規定に従うことを条件に第二二条に定める特権及び免除を与えられる。

 

第三六条 委員の義務

締約国を訪問するとき、防止小委員会の委員は、この議定書の規定及び目的並びに享受することのできる特権及び免除を害することなく、次の義務を負う。

(a) 訪問先の国の法令を尊重すること

(b) 任務の公平かつ国際的性格と両立しないいかなる行為又は活動も差し控えること

 

第三七条 正文   (略)

 

出典 東信堂 「国際人権条約・宣言集 第三版」より抜粋・編集

 

 

 

 


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