労働における基本的原則及び権利に関する
ILO宣言とそのフォローアップ
(仮 訳)
ILOは、社会正義が世界的かつ永続的な平和のために不可欠であるとの信念をもって設立され、経済成長は公平、社会進歩及び貧困の撲滅を確保するために不可欠であるが十分でないため、ILOが強力な社会政策、正義及び民主的制度を促進する必要性を確認するものであり、ILOは、経済発展及び社会開発のための世界戦略の文脈において、経済政策及び社会政策が広範な持続的発展を創造するため相互に補強しあう構成要素となることを確保するため、その権限の及ぶすべての範囲、特に雇用、職業訓練及び労働条件において、これまで以上に基準設定、技術協力及び調査研究のすべての資源を利用すべきであり、 ILOは、特別の社会的必要をもつ人々、特に失業者及び移民労働者の問題に特別の注意を払い、これらの者の問題を解決するための国際的、地域的及び国内的な努力を結集し、かつ奨励し、雇用創出のための効果的な政策を促進すべきであり、社会進歩と経済成長との関連性の維持に努めるに際し、労働における基本的原則及び権利の保障は、関係する者自身が自由に、そして機会の均等を基礎として、彼らの寄与により産み出された富の公平な分配を主張すること、及び彼らの人的潜在能力の実現を可能にすることから、特別に重要であり,ILOは、国際労働基準を設定し、取り扱う権限を有する機関であり、かつ憲章でそれを使命とするよう定められた国際機関であり、憲章上の原則の表現としての労働における基本的権利の促進に関して普遍的な支持及び承認を享受しており、経済的相互依存が増大している中、機関の憲章において具体的に示されている基本的原則及び権利の不変の性質を再確認し、それらの普遍的な適用を促進することが急務であるので、
国際労働総会は、
1.次のことを想起し、
(a)ILOに任意に加入する際に、すべての加盟国は憲章及びフィラデルフィア宣言に規定された原則及び権利を支持し、機関の全体的な目的の達成に向けて、手段のある限り、また、各加盟国の特有の状況に十分に沿って、取り組むことを引き受けたこと
(b)これらの原則及び権利は、機関の内部及び外部において基本的なものとして認められた条約において、特定の権利及び義務の形式で表現され、発展してきていること
2.すべての加盟国は、問題となっている条約を批准していない場合においても、まさに機関の加盟国であるという事実そのものにより、誠意をもって、憲章に従って、これらの条約の対象となっている基本的権利に関する原則、すなわち、
(a)結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認
(b)あらゆる形態の強制労働の禁止
(c)児童労働の実効的な廃止
(d)雇用及び職業における差別の排除
を尊重し、促進し、かつ実現する義務を負うことを宣言する。
3.外部の資源及び支援の動員を含め、機関の憲章上、運営上及び財政上の資源を十分に活用することにより、また、憲章第12条に従いILOが確立した関係を有する他の国際機関がこれらの努力を支援することを奨励することにより、これらの目的を達成するため、確立され、表明された必要に応じて、次の手段によって、加盟国を支援する機関の義務を認識する。
(a)基本条約の批准及び履行を促進するための技術協力及び助言サービスを提供すること
(b)これらの条約のすべて又は一部をまだ批准できる状況にない加盟国の、これらの条約の対象となっている基本的権利に関する原則を尊重し、促進し、かつ実現するための努力を支援すること
(c)経済発展及び社会開発のための環境創造に向けた加盟国の努力を支援すること
4.この宣言を完全に実施するため、意義があり、効果的な、宣言の不可欠な部分とみなされる促進的なフォローアップが附属書に示される方法に従い実施されることを決定する。
5.労働基準は保護主義的な貿易上の目的のために利用されるべきではなく、この宣言及びそのフォローアップはそのような目的のために援用され又は利用されるべきではないこと、さらに、この宣言及びそのフォローアップによって、いかなる方法においても、どの国の比較優位も問題とされるべきではないことを強調する。
附 属 書
宣言のフォローアップ
Ⅰ 全体の目的
1.下記のフォローアップの目的は、ILO憲章及びフィラデルフィア宣言に規定され、この宣言において再確認された基本的原則及び権利を促進するための機関の加盟国による努力を奨励することである。
2.厳密に促進的性質であるこの目的に沿って、このフォローアップは、機関の技術協力活動を通じた支援が、加盟国のこれらの基本的原則及び権利の履行を援助するために有効である領域を明らかにすることを可能にする。それは既存の監視機構に代わるものでもなければ、その機能を妨げるものでもない。従って、これらの機構の権限内にある特定の状況が、このフォローアップの枠組の中で検討又は再検討されるものではない。
3.下記のフォローアップの二つの側面は、既存の手続に基づくものである。すなわち、未批准の基本条約に関する年次フォローアップは、憲章第19条第5項(e)の適用に関する現在の様式の若干の修正のみを必要とし、グローバル・レポートは、憲章に従って実行される手続から最善の結果を得ることに役立つものである。
Ⅱ 未批准の基本条約に関する年次フォローアップ
A 目的及び範囲
1.目的は、すべての基本条約の批准をするに至っていない加盟国が宣言に従って行った努力について、1995年に理事会が導入した4年ごとの検討に代わる簡素化された手続によって、毎年検討する機会を提供することである。
2.フォローアップは、宣言に特定された基本的原則及び権利の四つの分野を毎年取り扱う
B 方式
1.フォローアップは、憲章第19条第5項(e)に基づき求められる加盟国からの報告を基礎とする。報告様式は、憲章第23条及び確立した慣行を十分考慮して、基本条約未批准国の政府から各国の法律及び慣行におけるあらゆる変化に関する情報を得られるように作成される
2.これらの報告は、事務局によりまとめられ、理事会により検討される。
3.このようにまとめられた報告の導入部を作成し、より詳細な議論が必要な側面に注意を喚起できるよう、事務局は、理事会によりこの目的のために任命された専門家のグループを招集できる。
4.理事国でない加盟国が理事会の討議において自国の報告に含まれる情報を補足するために必要な又は有用な説明を最も適当な方法により提供することができるように、理事会の既存の手続に対する修正が検討されるべきである。
Ⅲ グローバル・レポート
A 目的及び範囲
1.この報告の目的は、基本的原則及び権利の各分野に関する過去4年間の動的・包括的な概観を提供し、機関による支援の効果を評価し、かつ、特にそれを実行するために必要な内部及び外部の資源を動員するために作成される技術協力の行動計画の形式において、それ以降の期間における優先事項を決定するための基礎を提供することである。
2.この報告は、毎年、基本的原則及び権利の四つの分野を一つずつ順番に取り扱う。
B 方式
1.この報告は、公式の情報及び確立された手続に従って収集し、評価された情報に基づき、事務局長の責任において作成される。基本条約を批准していない加盟国の場合には、特に上記の年次フォローアップの結果が報告の基盤となる。関連する条約を批准している加盟国の場合は、特に憲章第22条の規定に基づく報告が基盤となる。
2.この報告は、事務局長の報告として、三者による討議のため、総会に提出される。総会は、総会議事規則第12条に基づく報告とは別にこの報告を取り扱うことができ、この報告のためだけの会議において、又は他の適切な方法によって、討議することができる。ついで理事会は、早期の会期において、次の4年間に実施されるべき技術協力の優先事項及び行動計画に関する議論から結論を引き出すべきである。
Ⅳ 次のように理解する。
1.上記の規定を実施するために必要な理事会議事規則及び総会議事規則の改正が提案されるべきである。
2.総会は、適当な時期に、Ⅰに述べられた全体の目的が適切に達成されているかどうかを評価するために、得られた経験に照らし、このフォローアップの運用について再検討すべきである。
出典 http://www.ilo.org/public/japanese/region/asro/tokyo/standards/declaration.htm#declaration
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