University of Minnesota Human Rights Center

女子に対するあらゆる形態の差別の廃止に関する条約の選択議定書 (女子差別撤廃条約選択議定書) (抄)、G.A. res. 54/4, annex, 54 U.N. GAOR Supp. (No. 49) at 5, U.N. Doc. A/54/49 (Vol. I) (2000)、効力発生 二〇〇〇年一〇月二二日

 この議定書の締約国は、

 国連憲章が基本的人権、人間の尊厳と価値及び男女の同権に対する信念を再確認していることに留意し、

 また、世界人権宣言が、すべての人間は、生まれながらにして自由であ り、かつ、尊厳及び権利について平等であること、並びに、何人も、性別に基づく差別を含むいかなる差別をも受けることなく、その中に掲げられたあ らゆる権利と自由を享有することができることを宣明していることにも留意し、

 国際人権規約及びその他の国際人権 基本文書が、性別による差別を禁止していることを想起し、

 また、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(「条約」とする)において、その締約国が、女性に対するあ らゆる形態の差別を非難するとともに、すべての適切な手段により、女性に対する差別を撤廃する政策を遅滞なく追及する旨合意していることも想起し、

 女性によるあらゆる人権と基本的自由の完全かつ平等な享受を確保し、これらの権 利と自由の侵害を防止するために効果的な行動をとる決意を再確認し、

 以下のとおり合意した。

第一条

 この議定書の締約国(「締約国」)は、第2条に基づき提出された通報を、女子差別撤廃委員会(「委員会」)が受理し及び審議する権限を有することを認める。

第二条

 通報は、締約国の管轄下にある個人又は集団であって、条約に定めるいずれかの権利が侵害されたと主張するものにより、又はそれに代って提出することができる。個人又は集団に代わって通報を提出する場合は、当該個人又は集団の同意を得て行うものとする。ただし、かかる同意がなくとも申立人が当該個人又は集団に代わって行動することを正当化できる場合は、この限りでない。

第三条

 通報は、文書で行うものとし、匿名であってはならない。委員会は、条約の締約国ではあるがこの議定書の締約国でないものに関するいかなる通報も受理してはならない。

第四条

1 委員会は、利用し得るすべての国内的救済措置が尽くされたことを確認した場合を除き、通報を検討しない。ただし、かかる救済措置の適用が不当に引き延ばされたり、効果的な救済の見込みがない場合は、この限りでない。

2 委員会は、次の場合、通報を受理することができないと宣言する。


(i) 同一の問題が委員会によってすでに審議されており、若しくは他の国際的調査又は解決手続きの下ですでに審議され又は審議中である。

(ii) 通報が条約の規定に抵触する場合

(iii) 通報が明らかに根拠を欠いており又は十分に立証されない。

(iv) 通報提出の権利の乱用である。

(v) 通報の対象となった事実が、当該締約国について本議定書が発効する以前に発生している。ただし、かかる事実がこの期日以降も継続している場合は、この限りでない。

第五条

1 通報が受理されてから理非の決定に到達するまでのいずれかの時点で、委員会は、該当する締約国に対し、通報の対象となった権利侵害の被害者に取り返しのつかない損害が及ぶ可能性を回避するために必要となり得る暫定的な措置を講ずるよう要請し、その緊急な検討を求めることができる。

2 委員会による本条第1項に定める裁量権の行使は、該当する通報の受理可能性又は理非に関する決定を示唆するものではない。

第六条

1 委員会が該当する締約国に対する照会を行わずに、通報が受理不可能と判断する場合を除き、かつ、通報の本人である個人又は集団が当該締約国に対するその身元の開示に同意していることを条件に、委員会は、この議定書に基づき提出された通報に関して、極秘に当該締約国の注意を喚起するものとする。

2 通報を受理する締約国は、6箇月以内に、委員会に説明書又は声明書を提出し、事実関係及び当該締約国によってとられた救済措置がある場合には、これを明らかにする。

第七条

1 委員会は、個人又は集団により、若しくはそれらに代わり、並びに関係締約国によって提出されたあらゆる情報に照らして、この議定書に基づき受理した通報を検討するものとするが、この場合、この情報が当事者に伝達されていることを条件とする。

2 委員会は、この議定書に基づく通報を検討する際には、非公開の会合を開くものとする。

3委員会は、通報を検討した後、通報に関する意見を、勧告があればこれと共に当事者に送付する。

4 当該締約国は、委員会の意見をもしあればその勧告と共に十分に検討した上で、6箇月以内に、委員会に委員会の意見及び勧告に照らしてとられたいかなる行動に関する情報も含め、回答書を提出するものとする。

5 委員会は、当該締約国に対し、同国がその意見又はもしあれば勧告に応じて講じたいかなる措置に関してもさらに情報を提出するよう促すことができるが、委員会が適切と判断する場合、かかる情報は、条約第18条に基づき当該国が後に作成する報告書に含めることができる。

第八条

1 委員会は、締約国による条約に定める権利の重大又は組織的な侵害を示唆する信頼できる情報を受理した場合には、当該締約国に対し、情報の検討における協力及び、この目的のために関係情報に関する見解の提出を促す。

2 委員会は、当該締約国から提出された見解及びその他の信頼できる情報があれば、これらを考慮した上で、調査を実施し、委員会に緊急の報告を行うよう1人又は複数の委員を指名することができる。十分な根拠及び当該締約国の同意がある場合、調査に同国領域への訪問を含めることができる。

3 かかる調査の結果を検討した上で、委員会は、何らかの註釈及び勧告があればこれを添えて、これらの調査結果を当該締約国に送付する。

4 当該締約国は、委員会が送付した調査結果、註釈及び勧告の受理から6箇月以内に、その見解を委員会に提出する。

5 かかる調査は極秘に行うものとし、手続きのあらゆる段階において、当該締約国の協力が求められる。

第九条

1 委員会は、関係締約国に対し、この議定書第8条に基づき行われた調査を受けて講じられたいかなる措置も、条約第18条に基づく報告書に含めるよう促すことができる。

2 委員会は、必要に応じ、第8条4項にある6箇月の期間の満了後も、当該締約国に対し、かかる調査に応えて講じられた措置について通知するよう促すことができる。

第一〇条

1 各締約国は、この議定書の署名又は批准、若しくはこれへの加入の際に、第8条及び第9条に定める委員会の権限を認めない旨宣言することができる。

2 本条1項に基づく宣言を行った締約国は、事務総長に対する通告により、いつでもこの宣言を撤回することができる。

一一条

 締約国は 、その管轄下にある者が、この議定書に従って委員会へ通報を行った結果として、虐待あるいは脅迫を受けないよう、あらゆる適切な措置を講ずる。

第一二条

 委員会は、条約第21条に基づくその年次報告の中に、この議定書に基づくその活動の概要を含める。

第一三条

 各締約国は、条約及びこの議定書を公表し、及び広く周知させ、並びに特に当該締約国が関係する事案についての委員会の見解及び勧告に関する情報へのアクセスを容易にすることを約束する。

第一四条

 委員会は、自らの手続規則を定め、この議定書によって与えられた権限を行使する際には、これに従う。

第一五条

1 この議定書は、条約に署名し、これを批准又はこれに加入した国による署名のために開放しておく。

2 この議定書は、条約の批准国及び加入国による批准に付されるものとする。批准書の寄託先は国際連合事務総長とする。

3 この議定書には、条約を批准、又はこれに加入した国のために開放しておく。

4 加入は、加入書を国際連合事務総長に寄託することによって効力を生ずる。

第一六条

 この議定書は、国際連合事務総長に10番目の批准書又は加入書が寄託された日から3箇月後に効力を生ずる。

2 この議定書の発効後に批准又は加入を行う各国について、この議定書は、自国の批准書又は加入書の寄託の日から3箇月後に効力を生ずる。

第一七条

 この議定書に対しては、いかなる留保も認められない。

第一八条

1 いずれの締約国も、この議定書に対する修正を提案し、これを国際連合事務総長に提出することができる。事務総長は、これを受け、いかなる修正案も締約国に通報するとともに、当該修正案に関する討議および票決を目的とした締約国会議の開催を望むか否かを同人に通知するよう要請する。締約国の3分の1以上がかかる会議を望む場合には、事務総長は、国際連合の主催によりこの会議を招集する。会議に出席し、かつ、投票する締約国の過半数によって採択されたいかなる修正案も国際連合総会に提出され、その承認を受ける。

2 修正条項は、国際連合総会によって承認され、かつ、この議定書の締約国の3分の2により、各国の憲法に定める過程を経て受け入れられた時点で、効力を生ずる。

3修正条項は、その発効の時点で、これを受け入れた締約国に対して拘束力を有するが、その他の締約国については、この議定書の規定及び以前に受け入れた修正条項があればその修正条項が引き続き拘束力を有する。

第一九条

1 いずれの締約国も、国際連合事務総長に対して書面による通告を行うことにより、この議定書を破棄することができる。破棄は、同事務総長が通告を受理した日から6箇月後に効力を生ずる。

2 第2条に基づき提出された通報、又は破棄の発効期日以前に第8条に基づき開始された調査がある場合、破棄はこれらに対するこの議定書の条項の適用の継続を妨げない。

第二一条

1 国際連合事務総長は、次の事項をすべての加盟国に対し通知する。

2 この議定書の規定による署名、批准及び加入、

3 この議定書の発効の日及び第18条の規定による修正条項がある場合には、その発効の日、

 第19条の規定による破棄。

出典 http://www.gender.go.jp/teppai/joyaku.html


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