University of Minnesota Human Rights Center


北京宣言及び行動要綱実施のための更なる行動とイニシアティブ、A/CONF. 177/20 (1995) and A/CONF. 177/20/Add. 1 (1995)

第1章 前文

 今回の特別総会に参集した各国政府は、1995年の第4回世界女性会議で採択された北京宣言及び行動綱領 ― 同会議の報告書に記載されている ―に掲げられた目標及び目的に対するコミットメント(関与)を再確認した。北京宣言及び行動綱領は、男女平等、開発、平和を目標に掲げ、女性のエンパワーメントに向けた課題を定めている。各国政府は、行動綱領の実施状況の検討と評価を行い、実施に当たって直面した障害及び現在の課題の特定を行った。各国政府は、行動綱領に掲げられた目標やコミットメント(関与)は十分な実施・達成には至っていないことを認識し、その実施速度を上げ、男女平等・開発・平和というコミットメント(誓約)を完全に実現するため、地方、国内、域内、国際レベルで更なる行動とイニシアティブを進めることに合意した。

 北京行動綱領には、女性の地位向上とエンパワーメントを達成するために優先的に取り組むべき12の重大問題領域が明記された。女性の地位委員会は、この12の各重大問題領域の実施状況を検討し、その達成の速度を上げるため、1996年以来合意結論や勧告を採択してきた。行動綱領は、こうした合意結論や勧告とともに、21世紀における男女平等、開発、平和の達成に向けた更なる前進を目指した取組の基礎となるものである。

 行動綱領の目的はあらゆる女性のエンパワーメントにあり、それはまた国際連合憲章及び国際法の目的や原則に全面的に合致するものである。女性のエンパワーメントのためには、あらゆる女性のあらゆる人権及び基本的自由の完全な実現が不可欠である。国、地域の特殊性及び種々の歴史的、文化的及び宗教的背景の重要性は考慮されなければならないが、あらゆる人権及び基本的自由の保護・促進は、その政治的、経済的及び文化的制度の如何を問わず、国家の義務である。あらゆる人権及び基本的自由に従い、国内法並びに戦略、政策、事業及び優先開発事項の策定等を通じての、行動綱領の実施は、各々の国家の至上の責任であり、個人及びその属する地域社会の様々な宗教的・倫理的価値観、文化的背景及び哲学的信念の重要性並びにそれらの全面的な尊重は、女性の人権の完全な享受及び、平等、開発、平和の達成に資するものでなければならない。

 行動綱領では、世界中の男女平等という共通の目標に向けて男性と共に連携して働くことによってのみ取り組むことができる共通の関心事を女性は分かち持っていることが強調されている。行動綱領は女性の状況及び条件の多様性を全面的に尊重し評価するとともに、そのエンパワーメントを阻む特別の障害に直面している女性たちもいるという認識を表明している。

 行動綱領は、女性が人種、年齢、言語、民族、文化、宗教又は障害といった要因のため、また先住民女性その他の立場のために、完全な平等及び地位向上を阻む障害に直面していることへの認識を示している。多くの女性が、特にひとり親などのような家庭状況、また、農村地域、孤立した地域若しくは貧困地域における生活状態を含む自らの社会経済的地位に関連した特別の障害に遭遇している。難民女性、国内避難民女性を含むその他の避難民女性並びに移民女性及び移住労働者を含む移民女性に対しては、更なる障害が加わる。多くの女性はまた、環境災害、重病及び感染性疾患、並びに女性に対する様々な形の暴力によって特別に影響を被っている。

第2章 行動綱領の12重大問題領域実施に関する成果と障害

 北京行動綱領及び12の重大問題領域に関して表明されたコミットメント(誓約)については、各国の報告書に記載されている各国が採った措置やその結果、事務総長の報告書、特別総会の準備のために開催された5つの地域会議の結果・結論・合意及びその他の関連情報の内容の検討を通じて、その成果と障害が評価されなければならない。そして、そうした評価から明らかになったことは、重要な前向きの進展も認められるものの、一方で、障害も依然として存在しており、北京で掲げられた目標やコミットメント(誓約)の更なる実施が必要であるという点である。このように、これまでの成果及びいまだ未解決の、あるいは新たに生じた障害を概観することによって、障害を克服するためには更にどのような行動やイニシアティブが必要なのかを明らかにし、あらゆる分野・あらゆるレベルにおいて行動綱領を完全に、また一層速度を上げて実施するため、求められる世界規模の枠組みを明らかにすることが可能となりうる。

 女性と貧困

成果:貧困問題にはジェンダーの側面があるということ、及び特に貧困の女性化に関連し、貧困の撲滅には男女平等が非常に重要な要因となっているということについての認識が大きく高まった。各国政府は非政府組織(NGO)と協力し、貧困撲滅のための政策や計画にジェンダーの視点を組み入れる努力をしてきた。多国籍・国際・地域金融機関も、自らの政策にジェンダーの視点を組み入れることに一層関心を払うようになっている。また、女性のための雇用及び所得創出活動の促進並びに教育や保健医療を含む基本的社会サービスへのアクセスの提供という二つのアプローチの採用が成果を上げている。女性を対象としたマイクロクレジット(少額融資)その他の金融手法が経済的エンパワーメントを成功させる戦略として登場してきており、農山漁村を始め貧困の中に暮らす一部の女性の経済的参画の機会が高まっている。政策策定では、女性が世帯主となっている世帯が抱える特有のニーズを考慮するようになっている。また、調査を通じて、貧困が男女に与える影響の違いに関する理解が深まり、こうした評価に役立つ手法が開発されている。

障害:男女間の経済格差の拡大には、所得格差、失業、最も弱く疎外されたグループの貧困レベルの深刻化など、多くの事情が起因している。なかでも債務負担、国家の安全保障に要する以上の過剰な軍事費、国際法や国際連合憲章に反する一方的措置、武力紛争、他国による占領、テロリズム、低レベルのODA及び先進国のGNPの0.7%を政府開発援助全体に、そして0.15%から0.2%を後発途上国に拠出するよう努力するという国際的な合意目標の未達成、資源の有効利用の欠如、その他の要因が、国の貧困撲滅努力の制約となっている。また、経済力の男女不平等や格差、男女間の無償労働の不平等な分布、女性起業家に対する技術支援や金融支援の欠如、特に土地や信用供与といった資本に対するアクセスや管理の不平等、労働市場への参入における不平等、あらゆる有害な伝統的習慣的慣行なども女性の経済的エンパワーメントの達成を阻んでおり、貧困の女性化を悪化させている。基本的な経済の再建が行われている移行期経済の国では、女性のエンパワーメントを目指す貧困撲滅計画に回す資源が欠如するという事態に直面している。

 女性の教育と訓練

成果:教育は、男女平等と女性のエンパワーメント実現のためのもっとも貴重な手段の一つであるという認識が高まっている。特に政治的コミットメント(関与)や資源配分に十分に恵まれているケースでは、あらゆるレベルで女性や少女に対する教育や訓練が進展した。先住民社会その他不利な立場に置かれ疎外された集団の女性や少女に、あらゆる分野の学習、特に非伝統的な分野の学習を行うことを奨励し、また、教育・訓練からジェンダーによる偏見を取り除くための、代替教育・訓練システムに着手する措置があらゆる地域で講じられた。

障害:一部諸国では、女性や少女の非識字を一掃し、識字能力を強化し、女性や少女がレベルや種類を問わずあらゆる教育を受ける機会を増やす努力は、資源の不足や教育の基盤整備改善及び教育改革実施を目指す政治的な意志やコミットメント(関与)の不足、教員研修の場などにおける根強い男女差別や性別による偏見、学校や高等教育機関、地域社会における職業に関する固定的な性別役割分担意識、保育施設の不足、相変わらず教材に登場する固定的な性別役割分担意識、女性の高等教育機関への進学と労働市場のダイナミクスとの関係に対して払われる関心の低さなどが障害となって十分成果を上げることができなかった。また、一部地域は遠隔地であることや、またある場合には給与や手当が不十分であるために教員を確保し、つなぎとめておくことが難しく、質の低い教育に甘んじている例もある。また、経済的・社会的・構造的障害や伝統的差別慣行が、少女の就学率や学業継続率に影響している国も多い。一部途上国では非識字の一掃にほとんど前進が見られず、経済的、社会的、政治的レベルにおける女性の不平等が悪化している。こうした国の中には、構造調整政策の内容や適用が不適切であるために、教育基盤整備に対する投資が削減され、教育部門に特に厳しい影響が出ている例もある。

 女性と健康

成果:女性の生涯を通じたあらゆる側面に対応する保健計画の必要性について、政策決定者及び政策立案者間の認識を育む計画が実施され、多くの国で平均寿命が伸びた。マラリアや結核、水を媒介とする疾病、伝染病や下痢、栄養失調に対する関心の高まり、行動綱領のパラグラフ94及び95に記載されている女性のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス及びリプロダクティブ・ライツへの関心の高まりや、一部諸国では行動綱領パラグラフ96の実施の更なる強調、家族計画や避妊法の知識の高まりや利用の増加、そして家族計画や避妊法やその利用における男性側の責任に関する男性側の認識の高まり、ヒト免疫不全ウィルス/後天性免疫不全症候群 (HIV/AIDS)などの性感染症、及びかかる感染症の予防方法に対する女性や少女の関心の高まり、母乳哺育、栄養、母子の健康に対する関心の高まり、保健及び保健関連教育や身体活動や、たばこ・麻薬・アルコールなどの薬物中毒に対するジェンダー特有の予防・リハビリプログラムへのジェンダーの視点の導入、女性の精神衛生、職場における健康、環境への配慮や女性高齢者特有の健康ニーズの認識に対する関心が高まった。1999年6月30日から7月2日にかけ、ニューヨークにおいて開催された第21回国連特別総会は、女性の健康分野における成果を見直し、ICPD(国際人口・開発会議)行動計画(注8)の更なる実施に向けての主要な行動(注7)の採択を行った。

障害:世界的に、富裕国・貧困国間、及び富裕国・貧困国に乳児死亡率及び妊産婦死亡率・疾病率の格差があること、ヒト免疫不全ウィルス/後天性免疫不全症候群などの性感染症、その他のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスの問題、マラリアや結核、下痢や水を媒介とする疾病といった風土病や感染症や伝染病、あるいは非伝染性の慢性疾患に対して女性や少女が特に弱い立場にあることを考慮すれば、女性や少女の健康に対する処置に格差があることは、いまだに容認できるものではない。一部諸国では、こうした風土病や感染症・伝染病によっていまだに多くの女性や少女の生命が奪われている。また、心/肺疾患、高血圧、変性疾患といった非伝染性疾患がいまだに女性の死亡や疾病の大きな原因となっている国もある。妊産婦死亡率・疾病率については改善が見られた国もあるが、いまだに大半の諸国で容認できないほど高い。基本的な産科医療に対する投資がいまだに十分でない国も多い。生涯を通じて可能な限り最高水準の心身の健康を享受するのは女性の権利であるとの前提に立った全体的な取組が、女性や少女の健康や保健医療に関して欠如していることが、この分野における進展を妨げている。考えうる最高水準の心身の健康を享受する女性の権利を侵害する障害にいまだ直面している女性もいる。また、保健医療制度が、最善の健康を維持することよりも疾病治療を圧倒的に重視していることも全体的取組の妨げとなっている。一部諸国では、健康が社会的・経済的決定要素として果たす役割に関する配慮が不足している。清潔な水、十分な栄養、安全な衛生設備へのアクセスの欠如、ジェンダーに特化した健康に関する研究や技術の欠如、環境的及び職業的な健康障害関連のものも含む、保健情報や保健医療サービスの提供に際してのジェンダーに対する配慮不足が、途上国及び先進国の女性に影響を与えている。依然として多くの途上国では、貧困と開発の遅れにより質の高い医療を提供し拡充することができないでいる。特に途上諸国では、財源や人材の不足により、また保健部門の再編や場合によっては医療制度の民営化が進んだことにより、医療サービスの質が低下し、サービスの縮小・不足を招くとともに、最も弱い女性集団の健康に対する関心の低下も招いている。多くの場合、男女の力関係が平等でなく、女性が安全で責任ある性習慣を主張する権限を持たないことや、また特に女性の健康を守るニーズに関する男女間のコミュニケーションや理解が欠如しているといったことが障害となって、HIV/AIDSを含む性感染症の疾病率が高まるなど、女性の健康が脅かされており、またとりわけ予防に関連するヘルスケアや教育への女性のアクセスが難しくなっている。思春期の若者、特に思春期の少女は、依然としてセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスに関する情報、教育、サービスを利用することができない。女性は保健医療の対象として、多くの場合、敬意をもって扱われることも、プライバシーや秘密保持を保障されることもなく、また、選択肢や利用可能なサービスに関する情報も十分には与えられない。場合によっては、保健サービス及びその従事者が、女性への保健医療サービスの提供時に、人権にのっとった、倫理的かつ専門的でジェンダーに敏感な基準を遵守しない、あるいは責任ある自発的なインフォームド・コンセントを保証しないという場合もある。また、セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスケア、妊産婦及び産科救急医療に対する十分な注意を含む、適切で、料金が手頃で質の高いプライマリー・ヘルスケアが利用できるかどうか、またどのように利用できるかについての情報がなく、乳癌・子宮頸癌・卵巣癌・骨粗しょう症の予防診断や検診や治療を受けられないという状況が続いている。男性用避妊薬の試験や開発もいまだに十分ではない。行動綱領のパラグラフ106(j)及び106(k)に盛り込まれている、危険な中絶が健康に及ぼす影響と中絶への依存を減らす必要性に関する行動については、一部諸国でいくつかの対策が講じられているものの完全実施に至っているとは言えない。女性、特に若い女性の喫煙率が増加し、癌その他重い病にかかるリスクや、たばこや間接喫煙によるジェンダー特有のリスクが増加している。

 女性に対する暴力

成果:女性や少女に対する暴力は、それが公共の場で発生するか私的な場で発生するかを問わず、人権の問題であることは広く受け入れられている。女性に対する暴力は、国家またはその機関によって犯された又は容認されたものであっても、人権侵害であるということが認識されてきている。暴力行為が国家によって犯されたものであれ私人によって犯されたものであれ、しかるべき勤勉さをもって、それらの行為を防止し、調査し、処罰するとともに、被害者を保護する義務を国家が有することが認識されてきている。ドメスティック・バイオレンスなど、女性や少女の人権や基本的自由の享受を侵害するとともに、これを享受することを妨げ、または不可能ならしめる、女性や少女に対する暴力を、特に法律や政策、計画の改善によって防止し、なくそうという認識やコミットメント(関与)が広がっている。各国政府は、暴力に対処するために部局間委員会、ガイドライン及び規定並びに国内の相互・共同計画といった政策改革や仕組み作りに着手している。また、あらゆる形態の暴力から女性や少女を保護する法律や加害者を訴追できる法律を導入又は改正した政府もある。女性に対するあらゆる形態の暴力は女性や少女の健康に深刻な影響を及ぼすという認識が、あらゆるレベルで浸透してきている。この問題の解決に当たっては、医療提供者(ヘルスケアプロバイダー)が重要な役割を果たすとみなされている。法的サービスや、シェルター、特別医療サービス、カウンセリング、ホットライン、特別な訓練を受けた警察の部署など、虐待された女性及び子どもを対象としたサービスの提供で前進が見られる。法執行官、裁判官、医療提供者、福祉担当者の教育が推進されている。女性向け教材の作成、一般を対象とした意識啓発キャンペーンの展開、さらには暴力の根本原因に関する研究が進められている。男性及び少年の役割を始めとするジェンダーの役割、女性に対するあらゆる形態の暴力、及び暴力が振るわれる家庭で育つ子どもの状況や、そうした環境で育つ子どもへの影響に関する調査や専門研究も増えている。女性に対する暴力防止の領域では、政府とNGOの協力の成功例もある。女性団体やNGOを始めとする市民団体の積極的支援が、意識啓発キャンペーンの推進、暴力の犠牲となった女性に対する支援サービスの提供という点で特に重要な役割を果たしている。女性に対する暴力の一形態である女性性器切除など有害な伝統的慣行の撲滅に向けた努力については、国内的、地域的及び国際的な政策支援が行われている。多くの国が、教育・福祉計画、及び有害な伝統的慣行を違法とする法的措置を導入した。また、こうした支援の一環として、国連人口基金によって女性性器切除撲滅特別大使が任命されている。

障害:今なお女性は様々な形態の暴力の被害者である。女性や少女に対するあらゆる形態の暴力の根本原因に関する理解が不十分であることが、女性や少女に対する暴力根絶の妨げとなっている。適当な場合には、暴力によらずに問題を解決できるようにする計画を行うなど、加害者を対象とした包括的な計画が欠如している。また、暴力に関するデータも不十分で、情報に基づいた政策や分析ができない。差別的な社会文化的風潮や経済力の差が、社会において女性を従属的立場に追いやっている。こうした土壌があるため、女性や少女は、殴打、家庭内の少女に対する性的虐待、持参金に関連した暴力、夫婦間のレイプ、女性性器の切除その他女性に有害な伝統的習慣、配偶者以外による暴力及び搾取絡みの暴力を含む、家庭内で起こる肉体的、性的及び心理的暴力といった、様々な形の暴力を受けやすくなっている。医療制度、職場、メディア、教育制度、司法制度間の暴力に対する調整を図った学際的取組が、まだあまり進んでいない国が多い。夫婦間の性的暴力を含むドメスティック・バイオレンスがいまだに私的な問題として扱われている国もある。ドメスティック・バイオレンスの影響、その防止方策及び被害者の権利に対する認識がいまだ不足している。改善はしているものの、ドメスティック・バイオレンスや子どもポルノなど女性や子どもに対する様々な形の暴力根絶のための、特に刑事司法における法的及び立法的措置が弱い国が多い。また、依然として予防戦略が統一性を欠き事後対応的である上に、こうした問題に対応する計画が欠如している。また、女性や子どものトラフィッキング(人の密輸)やあらゆる形態の経済的・性的搾取のために、新しい情報・通信技術が利用されることから問題が発生している国があることも報告されている。

 女性と武力紛争

成果:男性と女性は、武力紛争により、それぞれ異なる破壊的影響を受けるということ、また国際人権法や国際人道法の適用に当たってはジェンダーに配慮した取組が重要であるということについて認識が高まっている。武力紛争下での女性に対する犯罪が罪に問われないという現状を見直そうとする気運の高まりなど、女性に対する虐待への対策が、国内・国際レベルで講じられている。旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所及びルワンダ国際刑事裁判所は、武力紛争下での女性に対する暴力を取り上げたという意味で重要な役割を果たした。また、レイプ、性的奴隷、強制的売春、強制的妊娠、強制的不妊その他の形態の性的暴力は、武力紛争の状況下で行われれば戦争犯罪であり、一定の状況では人道に対する罪であると規定した点で、国際刑事裁判所ローマ規程(注9)の採択は歴史的意義を有するものである。平和構築、平和建設、紛争解決への女性の貢献についての認識が高まりつつある。暴力手段によらない紛争解決のあり方についての教育や研修が行われるようになってきた。また、難民女性の保護に関するガイドラインの普及と実施、避難民の女性のニーズに対する対応についても前進が見られる。難民認定の根拠としてジェンダーに基づく迫害を認めている国もある。各国政府、国際社会、国際機関、特に国連は、女性と男性では経験する人道上の非常事態が異なることを理解しており、ジェンダー特有の虐待被害など、あらゆる形態の虐待の被害者を含む、難民・避難民女性に対する全体的サポートを強化し、適切かつ十分な食糧と栄養、清潔な水、安全な衛生設備、避難所、教育及びリプロダクティブ・ヘルスや母子保健を含む社会・保健サービスへの平等なアクセスを確保することが必要である。また、人道援助の立案、企画、実施にはジェンダーの視点を組み入れ、十分な資源の手当てをすべきであるとの認識も高まっている。人道援助の提供、並びに適当な場合、人道上の緊急事態、紛争下及び紛争後の状況にある難民・避難民の女性や少女を含む女性や少女のニーズに対応する計画の企画や実施の面で、人道援助機関や非政府組織を含む市民社会がますます重要な役割を果たすようになっている。

障害:平和は、女性と男性の平等や開発と解き離ちがたく関連し合っている。武力その他の紛争、侵略戦争、他国による占領、植民地その他外国による支配及びテロリズムが、依然として女性の地位向上の大きな妨げとなっている。武力紛争時の、国家や国家以外の関係者による、女性や子どもなどの市民の標的化、強制退去、国内法や国際法に違反した子どもの徴兵は、男女平等及び女性の人権に特に悪影響をもたらしている。女性が世帯主となっている世帯は、生活が貧しい場合が多いが、武力紛争が発生すると、そうした家族が多数生まれたり、そうした家族の生活が悪化したりする。平和維持、平和構築、紛争後の調停、再建のための事務総長特別使節や特別代表など、あらゆるレベルでの意思決定における女性の参加が少ないこと、及びこうした領域でジェンダーに対する認識が欠如していることが大きな障害になっている。また、十分な資源の供給、資源の適切な配分ができず、増加する難民―女性や子どもがその大半を占める−や、とりわけ大量難民を受け入れている途上国のニーズに対応できないでいる。つまり、増加する難民の数に国際援助が追い付いていない状態である。国内避難民の増加、そして特に女性や子どもを始めとする国内避難民のニーズに対する対応が、依然として関係国及び関係国の財源に二重の負担となっている。女性の心の深い傷を癒す具体的な計画や技能訓練の不足など、武力紛争下の女性又は難民女性のニーズを扱う担当者の訓練が十分に行われていないことは依然として問題である。

 国家安全保障上の観点からの、世界的軍事費を含む過剰な軍事支出、武器取引及び武器生産への投資により、社会・経済開発に配分されるべき資金、とりわけ女性の地位向上に向けられるべき資金が配分されてこない。複数の国で、経済制裁が市民、とりわけ女性と子どもに社会的・人道的影響をもたらしている。
また、一部の国では、国家間の貿易関係の障害となり、影響を被る国の国民、特に女性及び子どもの経済的・社会的開発の完全な達成を阻み、彼らの安寧の妨げとなる、国際法及び国連憲章に違反した一方的措置により女性の地位の向上はマイナスの影響を受けている。
武力紛争下では、国際人権法及び国際人道法の基本原則に抵触する女性に対する人権侵害が今でも横行している。武力紛争下では、性的奴隷、レイプ、組織的レイプ、性的虐待、強制的妊娠など、女性に対するあらゆる形態の暴力が増加している。強制移住は、家や財産の喪失、貧困、一家の分裂・離散その他武力紛争がもたらす結果とあいまって、国民、特に女性や子どもに重大な影響を与えている。また、少女も、国際法に違反して誘拐又は徴用され、戦闘員、性的奴隷、又は家事提供者として武力紛争の場に連れ出されている。

 女性と経済

成果:女性は労働市場への参入が増えたことに伴い、経済的自立も獲得するようになった。いくつかの国では、女性の経済的・社会的権利や、経済的資源への平等なアクセス・管理、雇用における均等の保障を目的とした様々な対策を打ち出している。この他、国際労働条約の批准、国際労働条約に則った法律の制定や強化といった措置も採られてきた。仕事と家族としての責任を両立することの必要性や、母親の出産休暇、父親の配偶者出産休暇、さらには親の休暇、保育や介護サービス、手当といった施策の有効性についての認識も高まってきている。いくつかの国では、職場における差別的で、礼を欠いた行為への対策や、不健全な職場環境を防止する措置を採るとともに、科学的・技術的技能や意思決定などを含む、起業、教育・訓練における女性の役割を推進するため、必要な資金調達体制を整備した国もある。有償労働と無償労働の関係など、女性の経済的エンパワーメントを妨げる障害に関する研究が行われており、この評価を裏付ける手法が開発中である。

障害:マクロ経済政策の形成にジェンダーの視点を導入することの重要性について、いまだ広く認識されていない。今でも多くの女性が自給生産者として農山漁村やインフォーマルな分野(非公式経済)で働いたり、社会保障もほとんどない低所得のサービス部門で働いている。男性と同等の技能や経験を持つ女性の多くが、公式部門では男女の賃金格差に直面しているとともに、昇給や昇進で男性に遅れをとっている。男女の同一労働同一賃金又は同一価値労働同一賃金は、まだ完全に実現したと言える状況にない。職場における採用や昇進、及び妊娠検査の実施など妊娠に絡む男女差別、セクシュアル・ハラスメントも依然として存在する。相続権の取得などから生じる土地その他の財産に対する所有権を、完全かつ平等に享受する権利を、国内法でまだ女性に認めていない国もある。出産機能と家庭責任に配慮した体制や施策が欠如しているため、多くの場合、女性が専門的職業を積み重ねることは男性に比べて依然として難しい状況である。根強い固定的な性別役割分担意識が、男性労働者の父親としての地位の低下や、仕事と家庭責任を両立するようにとの男性に対する働きかけの不足を招いている場合もある。仕事の体制に関して家族に優しい政策が採られていないことが、こうした問題を助長している。法律や現実に即した支援システムがいまだに十分効果的に運用されていない。男性側が仕事や責任の分担を相応に引き受けるようにならない限り、有償労働と家族、世帯、地域の世話との二重負担が女性に不均衡にのしかかる状況は変わらない。いまだに無償労働の大半を担っているのもまた女性である。

 権力及び意思決定における女性

成果:政府間・政府・非政府部門を含む意思決定及び権力のあらゆるレベルとあらゆる場で女性が全面参加することの社会にとっての重要性が、次第に認識されてきている。こうした場で、女性がより高い地位を獲得している国もある。一部の国におけるクオータ(割当て)制度、自発的同意や、評価可能なゴールやターゲット(目標)の設定を含め、ますます多くの国が、積極的改善措置(アファーマティブ・アクションやポジティブ・アクション)政策の適用、女性のリーダーシップ養成のための研修計画の策定、そして男女がともに家庭と仕事の責任を両立するための手段の導入を進めている。女性の地位向上を担当する国内体制・国内本部機構や、女性の政治家、議員、活動家及び各分野の専門家による国内・国際ネットワークが、設立され、あるいは充実強化されてきている。

障害:あらゆるレベルの意思決定機関におけるジェンダーバランスの必要性について一般的に認識が定着してきているにもかかわらず、法律上の平等と事実上の平等の間にはいまだに開きがある。法律上、男女平等には目覚しい改善が見られるが、実際には、国内的にも国際的にも、最高レベルの意思決定の場への女性の参加は1995年の第4回世界女性会議の時からそれほど変わっていない。また、とりわけ、政治、紛争防止・紛争解決機構、経済、環境及びメディアなどあらゆる領域における意思決定の場への女性の参加は極めて少なく、こうした影響力の大きい分野へジェンダーの視点を組み入れる上での妨げとなっている。また、立法機関、大臣、次官レベル及び企業その他経済・社会機関の最高レベルに位置する女性は依然として少ない。伝統的な性別役割分担意識が、女性の教育やキャリアの選択を狭め、家事責任の負担を女性に課している。あらゆる女性をあらゆる政治的意思決定の場に参加できるようにする組織や政治機構のほかに、政治家養成の訓練や啓発に必要な人材や財源、社会における女性に対するジェンダーに敏感な態度や、場合によっては意思決定に携わろうとする女性の意識、選挙によって選ばれた公務員及び政党の、男女平等推進及び公共生活への女性参加の促進に向けての説明責任、意思決定過程へのジェンダーバランスの取れた参加の重要性に対する社会の認識、男性側の女性と権力を分かち合う意思、女性NGOとの十分な対話や協力の欠如が、意思決定過程への女性の参加促進を目指すイニシアティブ(先導的取組)や計画の障害となってきた。

 女性の地位向上のための制度的な仕組み

成果:国内本部機構は男女平等やジェンダーの主流化を促進し、行動綱領や、また多くの場合女性差別撤廃条約(注10)の実施状況を監視する「触媒」的機能を果たす制度的基盤として設置され、強化され、位置付けられてきた。多くの国で、国内本部機構の認知度、地位、範囲、活動の調整に前進が認められた。ジェンダーの主流化は、男女平等推進政策の効果を高めるための戦略として広く認知されてきた。この戦略の目標は、あらゆる立法政策、計画、プロジェクトにジェンダーの視点を組み入れることにある。国内本部機構は、財源が限られているにもかかわらず、ジェンダーの研究分野における人材育成に多大な貢献をしており、また、性別・年齢別データの作成や普及、ジェンダーを意識した研究やドキュメンテーション(文書管理)への取組強化に貢献をしてきた。国連システムにあっては、手法の開発や、ジェンダーに関するフォーカル・ポイントの設置など、ジェンダーの視点の主流化に大きな進展を見ている。

障害:多くの国の国内本部機構では、財源不足、人材不足、政治的意志やコミットメント(関与)の欠如という大きな障害に直面している。政府組織内の男女平等やジェンダーの主流化に関する理解不足、固定的な性別役割分担意識のまん延、差別的態度、政府内の優先事項の競合、また国によっては不明確な権限、国の政府組織における中心から外れた位置付け、多くの分野における性別・年齢別データ不足、進ちょく状況の評価方法の不徹底な適用、及び権限不足と市民社会との不十分な連携が状況をさらに悪化させている。また、政府部局内及び政府部局間の構造的な問題やコミュニケーションの問題も、国内本部機構の活動を妨げる要因となった。

 女性の人権

成果:あらゆる形態の差別を禁止する法律改正が実施され、婚姻や家族関係、あらゆる形態の暴力、女性の財産権や所有権、女性の政治、職業、雇用権を規定した民法、刑法、属人法の差別的条項が撤廃された。政策的措置の採用、執行・監視体制の改善、あらゆるレベルにおける法識字・啓発キャンペーンの実施などの環境作りを通じて、女性が自らの人権を事実上享受することが可能となるよう、各種措置が講じられてきた。女性差別撤廃条約の批准・加盟国は165か国に上り、女性差別撤廃委員会は、同条約の完全実施の促進を図ってきた。第54回総会では、女性差別撤廃条約の選択議定書(注11)が採択され、同条約が規定するあらゆる権利に関し、締約国に権利を侵害されたと主張する女性は、女性差別撤廃委員会に申し出ることができることとなったが、非政府組織による意識啓発や支援活動がこの選択議定書の採択の実現に貢献をした。また、女性NGOは、女性の権利は人権であるという認識の啓発にも貢献している。彼らは国際刑事裁判所ローマ規程へのジェンダーの視点の組み入れにも支援活動を展開した。また国連人権高等弁務官や人権委員会の活動を含む、国連組織への女性の人権の統合、ジェンダーの視点の主流化についても成果があった。

障害:男女差別その他あらゆる形態の差別、特に人種主義及び人種差別、排外主義やそれに関連する不寛容により、女性による人権及び基本的自由の享受が脅かされる状況が続いている。武力紛争や他国による占領下で、女性の人権は広範囲にわたって侵害されている。多くの国が女性差別撤廃条約を批准したが、2000年までにあらゆる国による批准を実現するとした目標は達成されておらず、同条約へは依然として大量の留保が付されている。男女平等を受け入れる土壌は着実に育っているものの、同条約の条項を完全実施していない国も多く、また差別的法律や有害な伝統的習慣的慣行、男女の固定的役割意識は依然として存在している。家族法、民法、刑法、労働法及び商法並びに行政規則や規定へジェンダーの視点が完全に組み入れられたとはいまだ言えない。法律や規制にギャップがあり、また法律や規制の実施や執行がなされないため、事実上も形式上も不平等や差別が永続化している。多くではないが、女性に差別的な法律が施行された例もある。また、多くの国では、非識字、法識字や情報・資源の欠如、ジェンダーの視点の欠如や女性への偏見、女性の人権や人間の尊厳・価値に対する敬意の念に欠けがちな法執行官や裁判官の、女性の人権に対する認識の欠如といった理由により、女性が法律を十分に活用することが難しい状況にある。リプロダクティブ・ライツについては行動綱領パラグラフ95の記述にもあるように、人権の一部を成す権利であるが、女性や少女のリプロダクティブ・ライツへの認識はいまだ不十分であり、彼らによるこの権利の完全享受を実現するには、多くの障害が立ちはだかっている。また自らの人種、言語、民族、文化、宗教、障害又は社会経済階級等といった要因のために、あるいは先住民、女性移住労働者を含む移民、避難民又は難民であるがゆえに、正義や自らの人権を享受することができない女性や少女がいる。

 女性とメディア

成果:地方、国内及び国際の各レベルで女性によるメディア・ネットワークが構築され、世界的な情報普及や意見交換、さらにメディアの仕事に携わる女性団体への支援推進等に貢献をしている。情報通信技術、とりわけインターネットの発達により、知識の共有やネットワーキング、電子商取引活動の分野で貢献できる女性が増え、コミュニケーションの機会が改善され、女性や少女のエンパワーメントも高まった。また、女性によるメディア組織やプログラムが増え、メディアへの女性の参加や、メディアにおける積極的な女性像の描写の促進という目的が達成されやすい状況となった。職業上の指針や自主規制を設けてメディアの番組で公正な男女の描写や性差別的意味合いのない用語の使用を奨励するなどして、否定的な女性像を排除する試みに成果を見た。

障害:ポルノグラフィや固定的性別意識に基づいた描写など、女性に関する否定的で、暴力的、品のないイメージが、時には新しい通信技術を利用して様々な形ではびこっており、また女性に対する偏見が今なおメディアに残っている。女性によるインターネットを含む情報通信技術へのアクセスは、貧困、アクセスや機会の欠如、非識字、コンピュータを使いこなす能力の不足、言語の壁などのため、困難な状況となっている。特に途上国、その中でも女性にとっては、インターネットの基盤の開発やそれへのアクセスは限られている。

 女性と環境

成果:国内の環境政策や計画にジェンダーの視点が組み入れられた例が複数ある。複数の政府が、男女平等、貧困撲滅、持続可能な開発、環境保護が相互に関連するものであることを認識し、国の開発戦略に天然資源管理、環境保護に関する訓練だけでなく、女性のための所得創出を目指した事業計画を盛り込んでいる。生態に関して先住民女性が有している伝統的知識等、女性の生態についての伝統的知識を保護・活用し、天然資源の管理や生物多様性の保存に利用しようというプロジェクトが実施に移されている。

障害:女性が直面している環境面でのリスクについて、また環境保護の推進には男女平等がプラスに作用するということについての一般市民の認識がまだ低い。特に途上国では、とりわけ男女差別などが原因となって、女性が技術的スキルや資源や情報を利用する機会に恵まれず、そのために女性は、持続可能な環境に関しての、国際レベルを含む意思決定に効果的に参加できていない。また、女性と男性に対する環境問題の影響や意味合いの違いについての研究、行動、ターゲット(目標)を定めた戦略、一般市民の意識啓発は依然として限られたものとなっている。環境悪化などの環境問題を根本的に解決するには、他国による占領といった問題の根本原因の解決に努力する必要がある。環境政策・計画におけるジェンダーの視点が欠けており、環境の持続性へ向けて女性が果たす役割や貢献への考慮がされていない。

 少女

成果:よりジェンダーに配慮した学校環境の整備、教育基盤の改善、就学率・学業継続率の向上、思春期の妊婦や母親を支援する仕組みの整備、ノンフォーマル教育機会の増大、科学技術の授業への受講拡大が進んだおかげで、初等教育、そしてそれには及ばないものの中等教育や高等教育においても、少女に対する教育にある程度の前進が得られた。思春期世代のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスなど、少女の健康に一層注意が払われるようになった。また、女性性器切除を禁止する法律を制定し、性的虐待、トラフィッキングその他商業目的のものも含め、少女に対するあらゆる形態の搾取に関わった関係者に対する罰則を強化する国も増えた。最近の成果としては、子どもの権利に関する条約の「武力紛争への子どもの参加」(注12)及び「子ども売買・子ども買春及び子どもポルノ」に関する2本の選択議定書(注13)が採択されたことが挙げられる。

障害:依然として続く貧困、女性や少女に対する差別的態度、少女に対する否定的な文化的態度や慣行、少女の潜在能力を閉じ込める固定的な性別役割分担意識、少女が置かれている具体的な状況及び子ども労働、並びに少女にのしかかる家庭内の重い負担に対する認識不足、栄養不良、保健サービスへの不十分なアクセス、教育や訓練の受講・修了を妨げることも多い資金不足といった要因が、少女が自信を持ち、自立・独立した大人になる機会や可能性を奪っている。貧困、親の支援や指導の欠如、情報や教育の欠如、少女に対する虐待及びあらゆる形態の搾取や暴力は、多くの場合望まない妊娠やHIV/AIDSなどの性感染症への感染につながり、それらがまた教育への機会を制限している。少女を対象とした計画は、財源や人材の欠如・不足によって実施を妨げられている。少女を対象とした政策や計画を実施する既存の国内体制はほとんどなく、担当機関相互の調整についても場合によっては十分といえるものではない。思春期の若者のセクシュアル/リプロダクティブ・ヘルスのニーズなど、健康のニーズに関する認識は高まってはいるが、必要な情報やサービスを十分提供するまでには至っていない。また、法律による保護は進展しているが、少女に対する性的虐待や性的搾取は増加している。思春期の若者が、自分のセクシュアリティに積極的に、かつ責任を持って対処できるようになるため必要な教育とサービスがいまだ不足している。

第3章 北京宣言及び行動綱領完全実施に際して直面する新たな課題

 急速な変化を遂げる世界情勢の中で、北京宣言及び行動綱領の実施状況に関する見直し及び評価が行われた。1995年以来、数多くの問題が顕在化し、また、男女平等、開発、平和の実現を目指して、行動綱領を完全にまた速度を上げて実施しようとする各国政府、政府間機関、国際機関、民間部門や適当な場合NGOに、更なる課題を突きつけるような新たな局面が台頭した。行動綱領の完全実施には、あらゆるレベルにおいて男女平等の達成に向けた政治的コミットメント(関与)が引き続き求められている。

 グローバリゼーションは第4回世界女性会議の目標へのコミットメント(誓約)の実施や実現に新たな課題を突きつけた。グローバリゼーションによって、いくつかの国では、より開かれた貿易と金融の流れ、国有企業の民営化がもたらされたが、多くの場合、特に社会サービスへの公共支出の削減をもたらした。これにより、生産パターンが変化し、情報通信分野での技術進歩の速度が速まり、女性は労働者としてだけではなく消費者としても生活に影響を受けた。多くの国、特に途上国や後発開発途上国ではこうした変化が女性の生活にマイナスの影響を与えるとともに、男女の不平等を拡大した。こうした変化の男女に与える影響について系統立った評価がなされてこなかった。グローバリゼーションはまた文化的価値、ライフスタイル、コミュニケーションの形態、持続的開発の達成の意味合いにまで及ぶ文化的政治的社会的影響をもたらした。拡大化する世界経済の恩恵は公平に分配されたわけではなく、経済格差や貧困の女性化、男女不平等を加速し、特に非公式経済や過疎地域での労働条件や労働環境を悪化させた。グローバリゼーションにより、一部の女性はより大きな経済的機会や自立を得たが、その他の多くの女性は国内及び国家間における不平等が深刻化したため、この恩恵にあずかることなく疎外されていった。多くの国において、女性の労働力率が上昇しているものの、中には経済政策がマイナスに作用し、女性の雇用増大が給与や昇進、労働条件の改善を伴うまでには至っていない場合もある。多くの女性は依然として不安定で安全衛生上の危険を抱える低賃金労働、パートタイム雇用、契約労働に従事している。多くの国で女性、特に労働市場へ新規参入をする女性は、最初に解雇され、最後に再雇用される存在であり続けている。

 国内及び国家間の経済情勢の格差の拡大が、経済の相互依存及び国家の外部の要因への依存の増大並びに経済危機とあいまって、近年、多くの国における経済の見通しに変化をもたらすとともに、経済不安定要因を引き起こしており、その結果女性の生活に大きな影響をもたらしている。こうした難しい状況により、社会保護や社会保障を提供する国家の能力、並びに行動綱領を実施するための国の資金調達能力が阻害されてきた。このような問題は、社会保護・社会保障経費その他の福祉手当の負担が公的部門から家計に移転していることにも反映されている。国際協力による資金調達の度合いが低下しており、女性が最貧困層を占める多くの途上国や移行期経済の国がさらに顧みられなくなる状況を助長している。ODA総額を先進諸国のGNP比0.7%にするという国際的に合意された目標はいまだ達成されていない。その結果、ますます貧困の女性化が進行し、男女平等を達成するための努力が弱体化している。国レベルの資金調達が限られているため、政府のみならずNGOや民間部門にとっても既存資源の配分に革新的なアプローチを採用することが不可欠となっている。こうした革新的アプローチの一つが公的予算のジェンダー分析であり、既存の資源を均等に配分するため、支出が男女にどのように異なる影響を与えるかを見定めるための重要な手法として浮上している。この分析は男女平等の推進に当たって不可欠なものである。

 グローバリゼーション、構造調整計画、多額な対外債務、貿易条件の低下によっていくつかの途上国において開発への立ちはだかる障害がさらに悪化し、貧困の女性化が一層深刻化している。構造調整計画のマイナスの影響は、その不適切な計画と運用に起因しており、特に教育や保健分野等、基礎的社会サービスへの予算削減により女性は不均衡に重い負担を担う状況が続いている。
途上国のほとんどが直面している債務負担の増加は持続可能性を否定するものであり、人を中心に据えた持続可能な開発や貧困撲滅を進める際の重大な障害のひとつとなっているという認識が広まっている。多くの途上国や移行期経済の国にとって、重債務は、社会開発を進め基礎的サービスを提供する国の能力を厳しく制約するものとなっており、行動綱領の完全実施に影響を与えている。

 移行期経済の国では女性は経済再編の余波を受け、また不況時には最初に職を失う者として最も厳しい苦境に直面している。これら女性は急速な成長分野から締め出されている。これらの国の女性は、国営の職場の廃止や民営化に起因する育児施設の不足、高齢者介護の必要性の増大と対応施設の不足、再雇用のための訓練機会やビジネス参入、あるいは事業拡大に必要な生産用資産の利用機会への継続的不平等という障害に直面している。

 開発の基本的構成要素である科学技術は、生産パターンを変容させ、雇用創出や、新しい職種、働き方を生み出し、知識を基盤とする社会の確立に貢献している。技術変化は、平等なアクセスの機会と十分な研修さえ受けられれば、あらゆる分野であらゆる女性に新たな機会をもたらしうる。女性自身もまた、こうした技術変化に関連する政策の定義、立案、開発、実施、ジェンダーの視点からの影響評価に積極的に関与することが求められる。世界中の多くの女性はいまだ、ネットワーク作り、啓発、情報交換、ビジネス、教育、メディア・コンサルテーション、電子商取引事業の領域で新しい通信技術を有効に活用している状況にはない。例えば、世界の何百万という最貧困層の女性及び男性は、依然として科学技術へのアクセスを持っておらず、またその恩恵にあずかることもなく、この新分野とそれがもたらす機会から排除されている状況である。

 移住者の労働移動パターンが変化しつつある。農業や家事労働、何らかの形の娯楽産業を中心に、いろいろな仕事を求めて、国内的、地域的、国際的労働移住を行う女性や少女の数はますます増加している。このような状況は、女性の所得を得る機会を増やし、自立を助ける一方で、とりわけ女性が貧しく、教育も技能もなく、不法移民として入国している場合は、これらの女性を不十分な労働条件や、健康上の危険増大、トラフィッキングや経済的・性的搾取、人種主義、人種差別、排外主義、その他の形態の虐待の危険にさらすものであり、また彼らの人権の享受を損ない、時には人権侵害をもたらすことにさえなる。
男女平等政策の推進及び実施に、最大の責任を有するのは各国政府であることを認める一方、政府と市民社会のいろいろな部門とのパートナーシップがこの目標達成への重要な仕組みであることへの認識が一層高まっている。この連携を強化するため新たな革新的アプローチの更なる開発が考えられよう。

 いくつかの国においては、現在、少子化、平均寿命の伸びと死亡率の低下といった人口統計学上の傾向が見られ、それが高齢化の進展や慢性的な健康問題を招いており、保健医療制度や保健医療に関する支出の問題、非公式な保健制度や研究の必要性を示唆するものとなっている。男女の平均寿命に格差があることから、夫に先立たれた妻や高齢の独身女性の数は大幅に増加しており、こうした女性達の社会的孤立やその他の社会的問題が生じている。社会が高齢女性の知識及び人生経験から得るものは大きい。また一方、現在の若い世代が人口に占める比率は歴史上最も高くなっている。思春期の少女や若い女性が有する特有のニーズへ一層関心を払っていくことが求められよう。

 とりわけ開発途上諸国におけるHIV/AIDSの急速なまん延は、女性に多大な影響を及ぼしている。この予防には責任ある行動と男女平等が、最も重要な前提の一つとなる。女性が自らのセクシュアリティに関する事柄を管理して自由かつ責任ある決定を行い、HIV/AIDS等の性感染症への感染をもたらすような危険で無責任な行動から自らを守り、男性の責任ある、安全で敬意を払うべき行動を促し、また男女平等を推し進めるためには、女性に力を付与するより効果的な戦略も必要である。HIV/AIDSは緊急な公衆衛生上の問題であり、これを封じ込めようとする努力をしのぐ勢いでまん延しており、多くの国では苦労して築いてきた開発の恩恵を台無しにしている。問題に対応するための基盤整備が不十分なことから、HIV/AIDS感染者やHIV/AIDSにより孤児となった子どもの世話の負担は特に女性に重くのしかかっている。HIVに感染した女性は、差別や恥辱に苦しむことが多く、またしばしば暴力の対象となる。HIVの予防や母子感染、母乳哺育、特に若者に対する情報・教育、危険度の高い行動の抑制、麻薬の静脈注射、支援グループ、カウンセリング及び任意の検査、パートナーへの告知、基礎薬品の提供とそれに掛かる高額な費用といった問題について必ずしも十分に取り組まれてきていない。いくつかの国ではHIV/AIDSとの闘いにおいて良い兆候も見られており、若者の行動に変化が起き始めるとともに、若者に対する教育プログラムは男性と女性の関係や男女平等に対するより前向きな見方の芽生え、初体験年齢のアップ、性感染症の危険の低減をもたらしうることが経験的に示されている。

 先進国・途上国を問わず、若い女性や少女による麻薬や薬物の乱用は深刻化しており、麻薬や向精神薬の違法な生産や供給、売買への需要削減や根絶への闘いに向けた努力が一層求められている。

 自然災害による犠牲者や損害の増大により、こうした緊急事態に対応する既存のアプローチや介入方法の非効率性や不十分さが認識されるようになった。かかる事態においては、男性に比べ、女性の方が、家族の日常生活の当面のニーズに対応する責任を負う場合が多い。このような状況に伴い、防災・災害緩和・災害復興戦略を策定・実施する際には必ずジェンダーの視点を組み入れなければならないとの認識がますます高まってきている。

 女性と男性の関係性の変化や、男女平等に関する議論の台頭に伴い、ジェンダーに基づく役割を再評価する動きが高まった。これはさらに、男女平等に向けた男女の役割と責任、また女性の潜在的能力の十分な発揮を阻んでいる固定的・伝統的性別役割を変革すべきであるとの議論を一層促進した。無償労働と有償労働への男女のバランスの取れた参加が必要である。国民経済計算の中で忘れられがちな女性の無償労働の質的評価と測定が欠如しているため、社会的経済的発展へ女性が十分に貢献していることがいまなお過小評価されている。仕事と責任の男女の負担割合が不十分であり続ける限り、有償労働と(家族の)世話の負担は男性に比べて女性に不均衡に重くのしかかる状態は今後も続くことになる。

第4章 行動綱領の完全かつ更なる実施の達成及び障害克服のための行動とイニシアティブ

 上記第2章に記述された、第4回世界女性会議以降の5年間における北京宣言及び行動綱領の実施状況の評価及び同じく第3章に概説された、北京宣言及び行動綱領の完全実施に影響を及ぼす現在の課題を踏まえ、各国政府は北京宣言及び行動綱領に再び最大限の努力を投じ、障害を克服し、課題に取り組むための更なる行動やイニシアティブに取り組むことを公約するものである。各国政府は、綱領で掲げられている目標達成を目指して更なる努力を続けるに当たり、発展の権利を始め、市民的、文化的、経済的、政治的、社会的権利を含むあらゆる人権は、普遍的・不可分なものであり、相互に依存し関連しあうものであり、21世紀における男女平等、開発、平和の実現に不可欠なものであると認識する。

 国連機関、ブレトン・ウッズ機関、世界貿易機関、その他の国際的・地域的政府間機関、議会、民間部門やNGOを含む市民社会、労働組合、その他の関係方面に対し、行動綱領の完全かつ効果的な実施を達成するため、政府の努力を支援すること、及び適当な場合、政府の努力を補完する計画を策定することを要請する。

 政府及び政府間機関は、NGOの自主性を十分に尊重しつつ、行動綱領の効果的実施にNGOが果たしている貢献や補完的役割を認識し、行動綱領の効果的実施とフォローアップに寄与すべく、引き続きNGO、特に女性団体とのパートナーシップを強化すべきである。

 経験上、男女平等の目標は、あらゆるレベルの様々な人々相互の関係が新しくなるという流れの中において、初めて十分に達成されるものであることが証明されている。この目標の達成には、社会のあらゆる局面で平等を基礎とした女性の効果的な完全参加こそが必要である。

 男女平等と女性のエンパワーメントを実現するためには、女性と男性及び少女と少年の間に存在する不平等を是正し、両者の平等の権利、責任、機会、可能性を確保することが求められる。男女平等とは、あらゆる領域のあらゆる活動における企画、実施、国内の監視、国際レベルを含むフォローアップや評価に当たって、男性だけではなく、女性のニーズ、利益、関心、経験、優先事項が不可欠の要素であることを意味している。

 各国政府及び国際社会は、行動綱領の採択を通じて、男女平等と女性のエンパワーメントを基本原則とし、共通の開発課題とすることを合意した。開発への女性の参加を確保する様々な試みが強化されてきたが、今後は平等な権利とパートナーシップ、あらゆる人権と基本的自由の保護・促進に基づいた全体的アプローチをもって、女性の置かれている状況や基本的ニーズに焦点を当てた取組に臨む必要がある。人間中心の持続可能な開発という目標の達成、生活の保障やセーフティー・ネット及び家族の財産・経済資源への平等なアクセス・管理を保障するような支援体制の強化等の十分な社会保護措置の確保、女性の中で増え続け、不均衡に女性にのしかかる貧困の撲滅を目指すような政策や計画の策定も行われなければならない。あらゆる経済政策や制度、また資源配分の責任者は平等の原則に基づいて開発の恩恵の分配が行われるようジェンダーの視点を取り入れるべきである。

 多くの諸国、とりわけ開発途上国において、女性への貧困の重荷が持続し増大していることから、特に教育や手頃な料金で入手可能な質の良い保健医療サービスといった社会サービスに万人が分け隔てなく平等にアクセスできるようになり、また経済的資源に平等にアクセスし管理することが可能になるために、ジェンダーの視点から、特に構造調整や対外債務に関する問題に対する政策や事業といった、総合的なマクロ経済・社会に関する政策や計画を検討、修正、実施し続けることが不可欠である。

 特にHIV/AIDSのまん延という状況下、教育、保健医療及び社会サービスへの平等なアクセスの提供、並びに教育、生涯を通じて得られる最高水準の心身両面の健康と安寧、及び万人が分け隔てなく利用できる、十分かつ手頃な料金によるセクシャル/リプロダクティブ・ヘルスを含む保健医療サービスに対する女性や少女の権利の保障に向け、更に努力しなければならない。また高齢女性人口が増加する中でこのような取組への必要性は一層高まっている。

 世界の大多数の女性が環境資源の供給の生産者及びユーザーであることからも、環境資源の持続可能性を確保するためには、女性の知識と優先事項を認識し、これらを環境資源の保全・管理に統合する必要がある。環境、生活の安全、及び日常生活の基本的要件の管理を脅かす災害や緊急事態に効果的に対応するため、ジェンダーに配慮した計画や基盤整備が求められる。
小島しょ開発途上国など、資源が限られていたりほとんど資源に恵まれない国にあっては、国民の生計は環境の保全や保護に大きく依存する。生物多様性について女性が習慣的に獲得している知識や管理の仕方、持続可能な利用方法について認識をする必要がある。

 あらゆる領域での、包括的かつ行動志向的政策の採用・実施にジェンダーの視点を主流に据えるためには、あらゆるレベルにおける政治的意志とコミットメント(関与)が極めて重要である。女性が、経済的・財政的資源、訓練、サービス、制度に平等にアクセスするとともに、これらを管理し、また意思決定や管理に参加するために必要な枠組みを更に発展させるためには政策のコミットメント(関与)が不可欠である。政策決定過程には、あらゆるレベルにおける男女のパートナーシップが必要である。また、行動綱領の目標達成とその実施に向けたあらゆる取組に、男性や少年も積極的に関与すべきであり、またそれが奨励されるべきである。

 女性や少女に対する暴力は、男女平等、開発及び平和という目標の達成を阻む障害である。女性に対する暴力は、女性の人権及び基本的自由を侵害すると同時に、女性がこれを享受することを妨げ、又は不可能ならしめるものである。殴打その他のドメスティック・バイオレンス、性的虐待、性的奴隷化及び搾取、女性及び子どもの国際的トラフィッキング、強制売春並びにセクシュアル・ハラスメントなどのジェンダーに基づく暴力、並びに文化的偏見、人種主義及び人種差別、排外主義、ポルノグラフィ、民族浄化、武力紛争、他国による占領、宗教的及び反宗教的過激主義並びにテロリズムから起こる女性に対する暴力は、人間の尊厳や価値とは相容れないものであり、その根絶に向けて闘っていかなければならない。

 女性は家族の中で重要な役割を担っている。家族は社会の基本的単位であるとともに社会的な結束と統合への強力な力として機能しており、この点からも強化すべきものである。女性に対する支援や、家庭に対する保護や支援が不十分だと、社会全体に影響を与え、男女平等達成に向けた努力にも水を差すことになりかねない。様々な文化的、政治的、社会的体制が存在するなか、家族の形態もいろいろであり、家族の一人一人の権利、能力、責任が尊重されなければならない。家族の安寧に女性が果たす社会的・経済的貢献、及び母性・父性の社会的重要性については、依然として十分に適切な扱いを受けているとは言い難い。家族や育児における母性、父性及び親や法的保護者の役割並びに家族の安寧への家族全員の重要性についても認識し、差別の根拠としてはならない。また、女性は今なお家事の責任や子ども、病人、高齢者の世話における責任を過重に引き受けている。こうした不均衡問題については、とりわけ教育といった適切な政策・計画を通じ、また適当な場合には法的手段を通じて絶え間なく取り組む必要がある。公的・私的な場で完全なパートナーシップを実現するため、男女が職業生活と家庭生活を両立し、その責任を平等に負担できるようにならなければならない。

 国内本部機構を女性の地位向上と男女平等の推進力として強固なものにするためには、同機構が女性のエンパワーメントのための政策、立法、計画及び能力開発の強化、採択及び監視を率先し、勧告し、促進するとともに、社会的な目標としての男女平等について開かれた公の対話がなされるための触媒的機能を果たすことができるよう、最高レベルでの政治的コミットメント(関与)と、必要なあらゆる人材や財源の動員が不可欠である。これにより国内本部機構は、あらゆる領域における女性の地位向上及び政策や計画におけるジェンダーの視点の主流化を推進し、唱導的役割を果たし、あらゆる部門の女性にあらゆる制度と資源への平等なアクセスと、より増進された能力開発を保証することができるようになる。制度や組織への平等なアクセスを女性に確保するためには、世界の変化によって生じる様々な課題に立ち向かうための改革が必要である。制度や概念の変革は、行動綱領の実施環境を整えるための戦略的かつ重要な側面である。

 女性の機会や可能性、活動の拡大を目指した計画支援には二つの焦点が必要である。一方では、能力開発、組織開発、エンパワーメントに向けて女性の基本的ニーズ及び特有のニーズを満たすことをねらった計画とすること、もう一方では、あらゆる計画の策定及び実施活動においてジェンダーの主流化を図ることである。新しい課題に対応して男女平等を推進するために、新分野のプログラム策定への展開を図ることが特に重要である。

 障害のある少女や女性は、年齢やその障害の種類を問わず一般的に弱者であり、社会的に不利な状況に置かれやすい。したがって、政策や計画策定の際には、常に障害のある少女や女性の意向があらゆる分野で最大限尊重されるよう配慮する必要がある。また、あらゆるレベルで彼らを開発の主流に組み込む特別な措置が必要である。

 行動綱領の完全実施に向けての計画やプログラムを効果的で相互調整の取れたものにするためには、女性や少女が置かれている状況についての明確な知識、研究に基づいた明確な知識や性別データ、短・長期のタイムバウンドターゲット(期限付の目標)や評価可能なゴール、進ちょく状況を評価するフォローアップ体制が必要となる。こうした目標を達成するには、あらゆる関係者の能力開発を進める努力が求められる。また国内レベルでは透明性と説明責任を高める努力も必要である。

 男女平等、開発及び平和の目標を実現・達成するためには、国際協力を一層強化するとともに、地方、国、地域、国際レベルで、男女平等の達成のための具体的で焦点を絞った活動に、必要な人的・財的・物的資源の手当てを行うことが必要である。国、地域及び国際レベルの予算編成の段階で、こうした目標への明確な注意の喚起が不可欠である。

 国内レベルで取るべき行動

各国政府により:

(a) 公的生活のあらゆる分野・あらゆるレベル、特に、政党や政治的な活動、あらゆる省庁や主要な政策立案機関及び地方の開発機関や地方公共団体において意思決定・政策立案を行う地位に関して、女性の平等な参画の機会と男性との平等を原則とした全面的参画を含め、ジェンダーバランスへの前進を促進するために、適当な場合にはクオータ(割当て)を定めることも含め、明確な長期・短期のタイムバウンドターゲット(期限付の目標)又は評価可能なゴールを設定し、その利用を奨励する。

(b) 訓練の欠如、有償・無償の労働の二重負担、社会が抱いている偏見や固定観念など、女性、特に先住民女性その他の疎外された女性が、政策や意思決定にアクセス、参加する際に直面する障壁に取り組む。

(a) 特に農山漁村や貧しい地域における少女の職業訓練や科学技術へのアクセス及び基礎教育の修了を始め、教育への平等な機会の提供や教育における男女格差の撤廃を保障する政策を確保するとともに、あらゆる女性や少女に対するあらゆるレベルの教育継続の機会提供を保障する。

(b) 少年・少女に対する教育の質の確保や就学率・学業継続率の改善と同時に、教育課程・教材・教育の過程における男女差別や固定的な性別役割分担意識の撤廃を目指したプランや行動計画の実施を支援する。

(c) 複数の国際会議が提唱しているように、2005年までに初等及び中等教育における性別格差を解消し、2015年までに少女及び少年に対する無償初等教育の義務化を実現するための行動を促進し、政治的コミットメント(関与)を強化するとともに、格差を助長・恒常化させてきた政策を撤廃する。

(d) 労働における性別分業の根本原因の一つとなっている固定的な性別役割分担意識の問題に対処するため、幼稚園から小学校、職業訓練、大学に至るまで、ジェンダーに配慮したカリキュラムを開発する。

(a) 女性があらゆる人権と基本的自由を享受することを保護・促進し、女性及び少女に対する権利侵害を容認しない環境を作るための諸施策を立案して実施に移す。

(b) できる限り早く、望むらくは2005年までに、差別的条項の撤廃に努めることを目的として法律の検討を行い、女性や少女が自らの権利を保護されず、ジェンダーに基づく差別に対抗出来る有効な救済手段を持たない状況下に放置されるといった法的ギャップを除去することによって、差別のない、ジェンダーに配慮した法的環境を構築し維持する。

(c) 女性差別撤廃条約を批准し、同条約に対する留保を制限し、同条約の目標及び目的に反する、あるいは国際条約法と相容れない留保を撤回する。

(d) 女性差別撤廃条約の選択議定書の署名及び批准を検討する。

(e) 国際刑事裁判所ローマ規程の署名及び批准を検討する。

(f) 女性や少女に対するあらゆる形態の差別を禁止・撤廃する法律・手続きの策定・検討・実施を行う。

(g) 出産機能(マタニティ)、母であること(マザーフッド)、親であること(ペアレンティング)、及び出産における女性の役割が差別の根拠となったり、女性の完全な社会参加を制限することがないよう、計画や政策を含む各種措置を講じる。

(h) 土地改革、地方分権、経済再編など、国の立法・行政改革が、女性、とりわけ農山漁村の女性や貧困の中で暮らす女性の権利を推進するものとなることを確保し、土地、財産権、相続権、信用、女性銀行や協同組合といった伝統的貯蓄方式などの経済的資源への女性の平等なアクセス・管理を通じて、女性のこれらの権利を促進し、女性が権利を享受できるような施策を講じる。

(i)  難民の地位及び庇護を認める根拠の評価に当たり、ジェンダーに関連した迫害や暴力を認定する措置を考慮するなど、あらゆる女性の権利を保護・促進するために、適当な場合には国の出入国管理及び庇護に関する政策、規則及び運用にジェンダーの視点を組み込む。

(j) 個人、組織又は企業による女性や少女に対する差別や暴力を根絶するあらゆる適切な措置を講じる。

(k) 民間部門や教育機関が差別を禁じた法律の遵守を促進・強化するよう、必要な対策を講じる。

(a) 優先事項として、適当な場合には女性に対する暴力などに対する有効な立法措置を導入することを念頭に置いて、法律の再検討や改正を行うとともに、その他の必要な措置を採って、あらゆる女性や少女があらゆる形態の肉体的、精神的及び性的暴力から保護され、裁判に訴える手段が与えられるようにする。

(b) 女性や少女に対するあらゆる形態の暴力の加害者を訴追して適切に処罰する。また、加害者に対し、暴力の繰り返しを断ち切る助けを行い、またそのように動機付けすることを目的とした措置を導入するとともに、被害者に救済の道を開くための対策を講じる。

(c) あらゆる形態の差別に基づく暴力を含め、年齢を問わず、女性や少女に対するあらゆる形態の暴力を法律による処罰対象となる刑事犯罪として扱う。

(d) 夫婦間レイプ、女性や少女の性的虐待を含むあらゆる形態のドメスティック・バイオレンスに関する犯罪に対処するため、法律の制定及び適切な制度の強化、あるいはそのいずれかの措置を採り、こうした犯罪を速やかに訴追できるようにする。

(e) 法律や適当な場合、政策や教育計画等その他の施策を策定、適用、完全実施して、女性や少女に対する人権侵害であり、女性が人権や基本的自由を全面的に享受する時の障害となる女性性器切除、若年強制結婚、いわゆる名誉犯罪などの有害な慣習や伝統的慣行を一掃し、地域の女性団体と協力し、これらの有害な伝統的習慣的慣行がどれほど女性の人権を侵害しているかについて集団及び個人の意識を啓発することに尽力する。

(f) 女性に対するあらゆる形態の暴力の根絶に向けた計画を立案し、必要な措置を講じるため、女性に対するあらゆる形態の暴力の根本原因への理解を深める研究を引き続き実施する。

(g) 政策や計画を通じ、女性や少女に対する人種主義や人種的差別に基づいた暴力への対策を講じる。

(h) あらゆる形態の暴力根絶のための適切かつ効果的な計画やサービスを実施するため、優先事項として、また先住民女性の完全に自発的な参加を得て、先住民女性に対する暴力が及ぼす影響に対処するための具体的措置を講じる。

(i) 女性や少女の精神的安寧を促進し、精神面の保健サービスを基礎的保健医療(プライマリー・ヘルスケア)体制に組み込み、ジェンダーに配慮した支援事業を開発する。またジェンダーに基づく暴力を認識し、いかなる形態であれ暴力を経験してきた少女及びあらゆる年齢の女性のケアをする保健従事者を養成する。

(j)  障害のある少女や女性及び弱い立場にある社会的に疎外された女性や少女を含むあらゆる年齢の少女や女性に対するあらゆる形態の暴力及び虐待に対処するため全体的取組を採用・推進し、こうした女性の教育、適切な保健医療サービス及び基礎的社会サービスを含む多様なニーズにこたえる。

(k) 生涯にわたる、またあらゆる状況における女性に対する暴力を根絶するため全体的取組を採用し推進する。

(a) 女性のトラフィッキング(人の密輸)を根絶するために、女性や少女の権利に対する保護の改善及び刑事・民事双方の措置を通じた加害者の処罰を目的として既存の法律を強化することも含め、買春その他の形態の性の商品化、強制結婚及び強制労働を目的とした女性や少女のトラフィッキングを助長する、外的要因を含む根本原因に対処する適切な施策を講じる。

(b) 法的措置、防止キャンペーン、情報交換、被害者の支援・保護及びその回復、仲介者を含む関係加害者全員の訴追を内容とする包括的なトラフィッキング禁止戦略を実施し、女性や少女のあらゆる形態のトラフィッキングをなくすよう努め、その撲滅のための効果的対策を策定し、実施し、また強化する。

(c) トラフィッキングの被害者が搾取の被害者であることを考慮し、国内法の枠組みの範囲内で、かつ国内政策が許す限りにおいて、女性や少女を始めとするトラフィッキングの被害者を不法入国や不法在留により処罰しないことを検討する。

(d) トラフィッキングを始めとする女性に対する暴力に関し、データ、根本原因、要素や傾向に関する情報交換の推進及び報告を目的とした、NGOを含む市民団体の参加による国内ラポラトゥール(報告機関)や機関間組織といった国内調整体制の設立又は強化を検討する。

(e) 女性及びその家族を保護・支援し、家族の安全確保を支援する政策を策定・強化する。

(a) 伝統的な薬物、生物多様性、先住民固有の技術に関する、先住民社会・地方社会の女性の知識、革新的技術、慣行を保護するため、適当な場合は、生物の多様性に関する条約(注14)を遵守した内容の国内法を採択することを検討する。

(b)  必要に応じて、環境や農業分野における政策や体制にジェンダーの視点を組み入れるとともに、市民社会と協力して農民、特に農業女性や農山漁村に住む女性を、教育及び訓練のプログラムの提供を通じて支援する。

(a) 極めて疾病率・死亡率が高い疾病を含む、マラリアや結核、HIV/AIDSその他女性の健康に不均衡に大きな影響をもたらす疾病など、新しく出現した、また現在も続いている健康上の問題におけるジェンダーの側面に、優先順位に基づいて対処する政策を採用し、対策を実施する。

(b) 妊産婦の罹患率・死亡率の低減を保健部門の優先事項とし、また、とりわけ母胎の安全確保を推進し、乳癌、子宮頸癌、卵巣癌、骨粗しょう症、HIV/AIDSなど性感染症の防止、発見、治療に優先的に対処するため、女性が基本的な産科医療、設備と十分な人員が整った妊産婦医療サービス、熟練した分娩介助サービス、救急産科医療、必要に応じた高度医療施設への効果的な照会サービスや搬送、産後ケア、家族計画に容易にアクセスできるようにする。

(c) 良質の家族計画サービスや避妊についていまだ充足されていないニーズを満たす対策、すなわち、サービスと供給と利用の間に現在存在するギャップを埋める対策を講じる。

(d)  女性の死亡率や罹患率に関する最新かつ信頼のできるデータを収集し普及するとともに、社会的・経済的要因があらゆる年齢の少女や女性の健康に与える影響についての詳しい研究、及び少女や女性に対する保健医療サービス提供、かかるサービスの利用パターン、女性を対象とした疾病予防・健康増進計画の価値に関する研究を行う。

(e) 男女を問わず誰でも、生涯を通じて、教育、清潔な水、安全衛生設備、栄養、食料安全保障、健康教育計画など、保健医療関係の社会サービスを平等に利用できるようにする。

(f) 保健医療従事者に安全な労働環境を提供するようにする。

(g) 必要に応じ、また適当な場合には、女性団体やその他の市民社会の関係者と協議し、保健関連の法律、政策、計画を採択、実施、検討、改定するとともに、あらゆる女性に生涯を通じての包括的でしっかりした内容で、料金が手頃な保健医療、情報、教育、サービスの提供を行うことで、達成可能な最高水準の心身の健康を確保し、HIV/AIDSの流行や女性特有の精神的・職業的保健計画の必要性や加齢に関する新しい知識が得られた結果女性や少女から新たに寄せられるようになったサービスやケアの要請にこたえ、また適当な場合は、取り締りや法的体制の設立又は強化により、あらゆる保健サービスや保健従事者が、女性を対象とした多様な保健サービスの中で倫理的、専門職業的かつジェンダーに配慮した基準に沿って人権を保護・促進するよう、必要な予算措置を行う。

(h) 保健情報、教育、保健医療サービスへのアクセスに関して、あらゆる女性や少女に対する差別を撤廃する。

(i) リプロダクティブ・ヘルスとは、人間の生殖システム、その機能と(活動)過程のあらゆる側面において、単に疾病、障害がないというばかりでなく、身体的、精神的、社会的に完全に良好な状態にあることを指す。したがって、リプロダクティブ・ヘルスは、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことができ、生殖能力を持ち、子どもを産むか産まないか、いつ産むか、何人産むかを決める自由を持つことを意味する。この最後の条件は、男女とも自ら選択した安全かつ効果的で、経済的にも無理がなく、受け入れやすい家族計画の方法並びに法に反しない他の出生調節の方法についての情報を得、その方法を利用する権利、及び女性が安全に妊娠・出産でき、またカップルが健康な子どもを持てる最善の機会を与えるよう適切なヘルスケア・サービスを利用できる権利について示唆している。上記のリプロダクティブ・ヘルスの定義にのっとり、リプロダクティブ・ヘルスケアは、リプロダクティブ・ヘルスに関わる諸問題の予防、解決を通して、リプロダクティブ・ヘルスとその良好な状態に寄与する一連の方法、技術、サービスの総体と定義される。リプロダクティブ・ヘルスは、個人の生と個人的人間関係の高揚を目的とする性に関する健康も含み、単に生殖と性感染症に関連するカウンセリングとケアにとどまるものではない。

(j) 上記の定義を念頭に置くと、リプロダクティブ・ライツは、国内法、人権に関する国際文書並びに国連で合意したその他関連文書で既に認められた人権の一部をなす。これらの権利は、あらゆるカップルと個人が自分たちの子どもの数、出産間隔及び出産する時期を責任をもって自由に決定でき、そのための情報と手段を得ることができるという基本的権利並びに最高水準の性に関する健康及びリプロダクティブ・ヘルスを得る権利を認めることにより成立している。その権利には、人権に関する文書にうたわれているように、差別、強制、暴力を受けることなく、生殖に関する決定を行える権利も含まれる。この権利を行使するに当たっては、現在の子どもと将来生まれてくる子どものニーズ及び地域社会に対する責任を考慮に入れなければならない。あらゆる人々がこれらの権利を責任を持って行使できるよう推進することが、家族計画を含むリプロダクティブ・ヘルスの分野において政府及び地域が支援する政策と事業の根底になければならない。このような取組の一環として、相互に尊敬しあう対等な男女関係を促進し、特に思春期の若者が自分のセクシュアリティに積極的に、かつ責任を持って対処できるよう、教育とサービスのニーズを満たすことに最大の関心を払わなければならない。セクシュアリティに関する知識不足、リプロダクティブ・ヘルスについての不適切または質の低い情報とサービス、危険性の高い性行動のまん延、差別的な社会慣習、女性や少女に対する否定的な態度、自らの性と生殖に関し限られた権限しか持つことが出来ない多くの女性や少女の現状といった諸事情のため、世界の多くの人々はリプロダクティブ・ヘルスを享受できないでいる。思春期の若者は特に弱い立場にある。これは大部分の国では情報と関連サービスが不足しているためである。高齢の男女は性に関する健康及びリプロダクティブ/セクシュアル・ヘルスについて特有の問題を抱えているが、十分な対応がなされていない場合が多い。

(k) 女性の人権には、強制や差別や暴力を受けることのないセクシャル/リプロダクティブ/ヘルスを含む、自らのセクシュアリティに関する事柄を自ら管理し、それらについて自由かつ責任ある決定を行う権利が含まれる。全人格への全面的な敬意を含む、性的関係及び性と生殖に関する事柄における女性と男性の平等な関係には、性行動とその結果に対する相互の尊重と同意、及び責任の共有が必要である。

(l) 男性が安全で責任ある性と生殖に関する行動を取り、望まない妊娠やHIV/AIDSなどの性感染症を予防する方法を効果的に取り入れることを奨励し、それを可能とするような計画を立案・実施する。

(m) 女性に対する有害かつ医学的に不要な又は強制的な医療の介入並びに不適切かつ過剰な投薬を排除するために、あらゆる適切な措置を講じ、また、適切な訓練を受けた職員から、あらゆる女性に対し、見込まれる利益と副作用の可能性なども含め、自らの選択に関して、十分知らされることを保障する。

(n) 女性や若者など、HIV/AIDSや性感染症を抱えて生活している人々が差別されず、そのプライバシーが尊重されるような施策を講じ、HIV/AIDSや性感染症の更なる感染を防止するために、こうした人々が必要な情報に接する機会を封じられることがないよう、また非難や差別や暴力の対象となる不安を伴うことなく治療や介護が受けられるようにする。

(o) 国際人口・開発会議の行動計画のパラグラフ8.25は以下のように述べている。

 「いかなる場合も、妊娠中絶を家族計画の手段として奨励すべきでない。全ての政府、関連政府間組織及びNGOは、女性の健康への取組を強化し、安全でない妊娠中絶(注解20)が健康に及ぼす影響を公衆衛生上の主要な問題として取り上げ、家族計画サービスの拡大と改善を通じ、妊娠中絶への依存を軽減するよう強く求められる。望まない妊娠の防止は常に最優先課題とし、妊娠中絶の必要性をなくすためにあらゆる努力がなされなければならない。望まない妊娠をした女性には、信頼できる情報と思いやりのあるカウンセリングが何時でも利用できるようにすべきである。健康に関する制度の中で、妊娠中絶に関わる施策の決定又はその変更は、国の法的手順に従い、国または地方レベルでのみ行うことができる。妊娠中絶が法律に反しない場合、その妊娠中絶は安全でなければならない。妊娠中絶による合併症に対しては、いかなる場合も女性が質の高いサービスを利用できるようにしなければならない。また、妊娠中絶後にはカウンセリング、教育及び家族計画サービスが即座に提供される必要があるが、それらの活動は妊娠中絶が繰り返されることを防ぐことにも役立つ。」

(注解20)安全でない妊娠中絶とは、必要な技術を持たない者により、あるいは最低限の医学水準に達していない環境、若しくはその両方の状況の下で、望まない妊娠を中絶させる措置と定義される。(世界保健機関技術作業グループ報告、「安全でない妊娠中絶の防止と管理」ジュネーヴ、1992年4月(WHO/MSM/92.5)による。)
 この記載を勘案し、違法な妊娠中絶を受けた女性に対する懲罰措置を含んでいる法律の見直しを考慮する。

(p) あらゆる女性、特に思春期の少女及び妊婦を対象として、男女別の包括的なたばこ防止・抑制戦略を推進・改善する。この戦略には、特に教育、たばこ防止・禁煙事業、たばこの煙にさらされる環境の改善、世界保健機関の国際たばこ対策枠組条約の支援などが含まれる。

(q)  薬物が健康に与えるリスクやその他の影響、家族に及ぼす影響に関する情報キャンペーンを始め、女性や思春期の少女に広がる薬物乱用の撲滅を目指した情報計画や治療を含む処置を推進し、又は改善する。

(a)  主要なマクロ経済・社会開発政策、及び国家開発計画へのジェンダーの視点の主流化を図る。
(b) 公正で、効果的かつ適切な資源配分を推進すること、そして女性のエンパワーメントを強化するとともに、監視や評価に必要な分析的及び方法論的手法や仕組みを開発する、男女平等と開発を目的とした施策の支援を目指して適切な予算配分編成を行うため、適当な場合には、あらゆる予算過程における立案、開発、採用、執行作業にジェンダーの視点を取り入れる。

(c) 開発と貧困撲滅対策の中心的戦略として、男女平等と女性のエンパワーメントを達成するため、社会部門、特に教育と保健の分野への財源その他の資源を適当な場合には増やし、その有効利用を図る。

(d) 短・長期目標を含め、ジェンダーの視点及び女性のエンパワーメントを重視した国内における貧困を撲滅するための計画を実施し、貧困層に女性、特に農山漁村の女性が不均衡に多い状態を減らすよう努力する。

(a) 持続可能な開発を推進するとともに、技能訓練、資源や融資、マイクロクレジット(少額融資)を含む信用供与、情報、技術、市場への平等なアクセスや管理の提供により、特に女性を対象とした貧困を撲滅するための計画を支援・確保する社会経済政策を実施し、農山漁村の女性、先住民女性、女性が世帯主の家庭を含む、特に貧困の中で暮らす女性や社会的に疎外された女性等、あらゆる年齢の女性に資するようにする。

(b) グローバリゼーションがもたらす労働条件の不確実さや変化からの保護を目的とした措置を採るため、貧困や人口統計学上の変化、社会の変化の中で暮らすあらゆる女性に特有のニーズを考慮しつつ、社会的保護制度を構築し、こうした制度への平等な利用機会を提供するとともに、新しく出現している柔軟性を有した労働形態が、十分に社会的保護の対象となるよう努める。

(c) 特にジェンダーの視点から構造調整や対外債務問題の分析を行うなど、引き続きマクロ経済・社会政策・施策の検討、修正、実施を継続し、女性が資源への平等なアクセスや基本的社会サービスへの普遍的なアクセスを確保できるようにする。

 特に、適当な場合には十分な社会的保護の手当、行政手続きの簡素化、財政的な障害の除去、その他の措置、例えばベンチャー・キャピタルや信用の仕組み、マイクロクレジット(少額融資)やその他の資金供与へのアクセスなどを通じて、零細企業や中小企業設立の気運を促し、これらにより女性の雇用促進を図る。

(a) 市民社会、特に女性NGOと協力し、男女平等に対する社会的支援の強化に向けて、国内本部機構と協力するためのあらゆるレベルでの制度的仕組みを構築し、又は既存の仕組みを強化する。

(b) ジェンダーの視点を主流化して、あらゆる領域における女性のエンパワーメントを促進し、男女平等政策に対するコミットメント(関与)を確保するために、特に国内本部機構を強化し、継続的な女性の地位向上に向けた最高レベルでの措置を講じる。

(c) 革新的な資金計画の検討も含め、国内本部機構に必要な人的財的資源を投入し、あらゆる政策、計画、プロジェクトにジェンダーの主流化が組み込まれるようにする。

(d) 機会均等を推進するため、効果的な委員会その他の組織の設立を検討する。

(e) 北京行動綱領の実施に向けて策定された国内行動計画を全面実施する努力を強化し、必要な場合には修正又は将来に向けた国内計画を策定する。

(f) 政府のあらゆる情報政策や戦略をジェンダーに配慮したものとする。

(a) 特にジェンダーに基づく分析、監視、影響評価を行う場合に、一般の人や政策決定者が利用しやすい様式で、性別、年齢別及び適当な場合にはその他の要因別のデータを収集、編集、普及するために、国の統計担当部局に制度的・財政的支援を行うとともに、統計や指標、特に情報が不足している分野での統計や指標を開発するための新しい業務について支援する。

(b) 定期的に犯罪に関する統計を編集・公表し、またより効果的な政策を策定するために、女性及び少女に対する権利侵害に関する法の執行状況の傾向を監視する。

(c) ジェンダー分野の専門知識に基づいた政策決定を可能にするために、大学や国の研究・研修機関において政策志向的でかつジェンダーに関連した研究や影響調査を実施できるような、国の能力を開発する。

 国内レベルで取るべき更なる行動

各国政府・民間部門・NGO・その他市民社会により:

(a) 研修や法識字プログラムの策定を奨励し、女性団体の、女性や少女の人権と基本的自由を保護する団体としての能力を開発・支援する。

(b) 女性や少女のあらゆる人権や基本的自由、人間としての尊厳や価値、及び女性と男性の平等な権利の保護・促進を目指して、政府の様々なレベル、NGO、草の根組織、伝統的な地域の指導者の連携を、そして適当な場合にはこれらそれぞれの中での連携を奨励する。

(c) 法律が差別的にならないよう、政府当局、国会議員その他関係当局、適切な場合には、NGOを含む女性団体間の協力を促す。

(d) 警察官、検察官、裁判官を含むあらゆる関係者に対し、特に女性や少女の、性的暴力を含む暴力被害者に対応するための、ジェンダーに配慮した研修を行う。

(a) 女性の生涯を通じた心身の健康への全体的取組を行い、保健情報やサービスの設計見直しや、保健従事者をジェンダーに敏感にする研修の実施といった更なる措置を採り、保健医療制度のあらゆるレベルでジェンダーバランスの維持を推進して、女性の視点や女性のプライバシー、秘密保持、自発的なインフォームド・コンセントに対する権利を反映する。

(b) 2015年までに、生涯を通じて誰でもセクシャル/リプロダクティブ・ヘルスケアを含む質の高いプライマリー・ヘルスケアを広く受けられるよう一層努力する。

(c) 第21回国連特別総会で採択された国際人口・開発会議の行動計画の実施を進めるための主要行動の実施に向けて、妊産婦の死亡率の低減、熟練した介助者の援助による出産の比率の増加、できる限り広範囲な安全かつ効果的な家族計画・避妊法の提供、若者によるHIV/AIDS感染リスクの低減といった具体的基準(ベンチマーク)の達成に特に注意を払いつつ、国内政策、計画、法律の検討・改正を行う。

(d) 栄養に関する男女格差の解消に特別な関心を払いながら、学校給食計画、母子栄養計画、微量栄養補助など、栄養失調対策プログラムへの支援の推進・拡大を通じて、重度・中程度の栄養失調の影響、生涯にわたる栄養の影響、母子の健康の関係を認識しつつ、あらゆる女性や少女の栄養状態を改善する対策を強化する。

(e) 女性の全面的な参加の下、とりわけ地方及び都市部の貧困女性に対する保健サービスの提供に関して、保健部門の改革の取組が女性の健康や人権享受に及ぼす影響を検討し、監視するとともに、この改革が女性の多様なニーズに配慮しながら、あらゆる女性が利用でき、料金が手頃で、質の高い保健医療サービスに完全かつ平等にアクセスできることを保障したものとなるようにする。

(f) プライバシー、秘密保持、尊厳及びインフォームド・コンセントに対する思春期の若者の権利とともに、子どもの権利に関する条約(注15)に認められ、また女性差別撤廃条約に則った権利を子どもが行使する際に、発達する子どもの能力に合わせて適切な指導及び手引きを与える、親及び法定保護者の責任、権利及び義務を考慮し、子どもに関するあらゆる行動において、子どもの最善の利益をまず第一に考えなければならないことを確認したうえで、適当な場合には思春期の若者の全面参加を得て、彼らが効果的にリプロダクティブ/セクシュアル・ヘルスのニーズに対応できるように、教育、情報、及び適切かつ具体的で使い勝手がよく、利用可能なサービスを、いかなる差別もなしに提供する計画を開発し、実施する。こうした計画は、特に思春期の少女に自尊心を植え付けて自分の人生に責任を取ることを手助けし、男女平等と責任ある性行動を推進し、HIV/AIDSなどの性感染症や性暴力、性的虐待についての認識を高めてこれを防止し、またこれに対処し、望まない妊娠や若年妊娠の回避に関して思春期の若者の相談に乗るべきものでなければならない。

(g) 妊娠中あるいは子どもを持つ思春期世代の女性については、特に教育を継続・修了できるように、社会サービスや支援を提供する計画を立案・実施する。

(h) 心肺疾患、高血圧、骨粗しょう症、乳癌・子宮頸癌・卵巣癌、及び男女を対象とした家族計画や避妊法など、女性の健康のニーズにこたえる、改良された技術や新技術及び安全で値段の手頃な薬や治療へのアクセスの開発や改善に特別の関心を払う。

 ジェンダーに基づく研究や分析手法や方法論、研修、ケーススタディ、統計や情報を含む、ジェンダーの主流化の速度を上げるための枠組みやガイドラインその他の実際的な手法や指標を開発して利用する。

(a) 女性の政界進出やあらゆるレベルでの参加を奨励することにより、年齢や背景を問わず男性と同じ条件の下で、女性に対する平等な機会と望ましい条件を提供する。

(b) 女性議員の比率を上げて、公共政策の策定への寄与を高めるため、特に政党を通じた、クオータ(割当て)や評価可能なゴールの設定、あるいは議会その他の立法機関の選挙への、その他適当な手段を含め、より多くの女性候補を推薦するよう奨励する。

(c) あらゆる女性、特に公的生活への参加に特に障壁がある女性が、自分達の生活に影響を及ぼすような決定に全面関与し、このような決定について情報提供を受けることができるような協議過程や仕組みを、NGOや地域団体を含む女性団体と協力して開発するとともに、その維持を図る。

(a) 特に、採用時の性別に基づく偏見、労働条件、職業上の差別や嫌がらせ、社会保障給付上の差別、職場における女性の健康と安全、昇進機会の不平等、不十分な男性の家事分担について取り組むなど、女性労働者の権利を保護・促進し、構造的・法的障壁や職場における固定的な性別役割分担意識を除去する行動を起こす。
(b) 男女が自分の仕事と家族の責任を両立することができるとともに、男性が家事や育児の責任を女性と同等に分担することを奨励する計画を推進する。

(c) 様々な形で家族の幸福に寄与している女性のいくつもの役割を支援するため、出産機能(マタニティ)や母であること(マザーフッド)、親であること(ペアレンティング)、親や法的保護者が、子ども及び子ども以外の家族の世話に果たす役割の社会的重要性を評価する政策や計画を開発又は強化する。この点からも、こうした政策や計画は、親や女性及び男性、そして社会全体による責任の共同分担を推進するものであるべきである。

(d) 子どもやその他の扶養家族のための、料金が手頃で利用しやすく質の高いケアサービス、親その他の休暇制度、男女の雇用及び家族の責任の公平な分担に関して世論その他関係者の意識を喚起するキャンペーンを含む、ファミリー・フレンドリーな政策やサービスを立案し、実施し、推進する。

(e) 特に開発途上国において、生涯の様々な段階で女性がエンパワーメントされることを支援するため、情報通信技術や起業家に求められる技能等に関するフォーマル・ノンフォーマル訓練や職業訓練、生涯学習・再訓練、遠隔地教育を受けられる機会を増やして、女性が雇用される可能性や質の良い仕事を得る可能性を高める政策や計画を推進する。

(f) 特に女性のキャリア開発や昇進を支援する制度的ネットワークの構築や拡充を奨励するなど、労働市場のあらゆる分野や職種において女性の参加を高め、バランスの取れた男女比率を実現する措置を講じる。

(g) 情報、職業訓練を含む訓練、新技術、ネットワーク、信用貸付け・金融サービスへのアクセスを通じて、新規事業を起こそうと志す女性起業家を含む女性起業家を支援するための計画や政策の策定及び強化、あるいはそのいずれかに取り組む。

(h) 同一労働同一賃金又は同一価値労働同一賃金を推進し、男女の所得格差を縮小するための積極的措置に着手する。

(i) 少女に対して科学、数学、情報技術を含むニューテクノロジー、技術分野への教育を奨励・支援し、女性に対してキャリアに関する助言等を通じて、高成長・高賃金の分野や仕事に求職することを奨励する。

(j) 男女平等及びジェンダーに対する前向きな態度や行動を推進するために、とりわけ男性や少年を対象とした男女別の役割や責任に対する固定的な態度や行動を変えることを目的とした政策や施策を実施する。

(k) 根強い有害な固定概念を払拭するため、女性・男性、少女・少年を対象としたジェンダー啓発キャンペーンや男女平等研修を強化する。

(l) 移行期経済及びグローバリゼーションを含む経済の構造変化に伴う雇用創出過程や企業縮小が男女に異なる影響を及ぼす主な理由を、必要に応じ分析し対応する。

(m) とりわけ、労働時間の管理、ジェンダーを意識した情報や啓発キャンペーンの普及を通じ、民間部門におけるジェンダーに対する意識を高め、またその社会的責任を高める。

(a) 男女平等の実現に向けた国内政策、計画、基準(ベンチマーク)の実施の進ちょく状況を監視するため、NGO、特に女性団体の参加のもと、国の協同作業による定期報告体制を強化又は適当な場合には構築する。

(b) 不利な立場にある女性、とりわけ農山漁村の女性が、事業やその他の持続性のある生計手段を立ち上げる際に、金融機関を活用できるよう援助活動を行っているNGO及び地域に根差した団体を支援する。

(c) 高齢女性が、生活のあらゆる局面に積極的に関わり、地域や公的生活、意思決定レベルで多様な役割を引き受けることができるような施策を講じる。また、高齢女性が、人権や質の高い生活を全面的に享受できるようにすると同時に、これら女性のニーズに対応する政策や計画を策定・実施し、あらゆる年齢層の人々のための社会の実現を目指す。

(d) 障害のある女性や少女特有のニーズに完全に対応し、技術・職業訓練や十分なリハビリ計画を含むあらゆるレベルでの教育及び保健医療サービスや雇用機会への平等なアクセスを確保し、これらの女性や少女の人権を保護・促進し、障害のある男女間に存在する不平等の撤廃が適切な場合には、これらを撤廃する政策や計画を策定・実施する。

 国際レベルで取るべき行動

国連システム及び適当な場合は国際・地域機関により:

(a) 政府の要請があった場合、政府が、行動綱領の実施に向けて、制度的能力を構築し、国内行動計画の策定または既存の行動計画の更なる実施に取り組むことを支援する。

(b) NGO、特に女性団体が、行動綱領を擁護し、実施し、評価し、フォローアップする能力を開発することを支援する。

(c) 行動綱領の12重大問題領域を実施するため、十分な資源を地域や国の計画に対し措置する。

(d) 移行期経済の国の政府による、女性の経済的・政治的エンパワーメントを目指したプランや計画の策定・実施への一層の取組に対して支援を行う。

(e) 経済社会理事会が地域委員会に対し、それぞれの権限や資源の範囲で、各地域で国連の機関や組織が実施しているあらゆるプロジェクトや計画を掲載したデータベースを作成し、定期的に更新するとともに、その普及の便宜を図り、またそれが行動綱領の実施を通じた女性のエンパワーメントに与える影響の評価の実施を進めるよう要請することを奨励する。

(a) 国連システム、経済社会理事会の合意結論、その他プログラムやイニシアティブから得られるあらゆる専門知識を動員し、国連のあらゆる主要会議やサミットのフォローアップを総合的調整の下に行うなど、国連システムのあらゆる政策・計画・企画立案にジェンダーの視点の主流化を図ると同時に、この目標達成のための十分な資源配分やジェンダー関連部局・フォーカルポイントの維持を確保するため、引き続き国連機関に託された任務を実施し、評価し、フォローアップする。

(b) 国からの要請があった場合、社会や経済に対する女性と男性の貢献、並びにとりわけ貧困及びあらゆる部門における有償・無償労働との関連での女性と男性の社会的経済的状況に関する統計の取り方の開発や集計について国を支援する。

(c) 国際女性調査訓練研修所(INSTRAW)が開発しているジェンダー啓発情報ネットワーキング・システム等の利用を含む共同研究、訓練や情報普及の一環として、新しい情報技術へのアクセス拡大を図る国、特に途上国の取組を支援すると同時に、従来の情報普及、研究、訓練の方法も支援する。

(d) 本部やフィールド(出先)、特に現場の任務に就いているあらゆる国連職員が、ジェンダーの影響分析など、それぞれの仕事にジェンダーの視点の主流化を図る訓練を受けるとともに、こうした訓練のフォローアップが適切に行われるようにする。

(e) 国連女性の地位委員会がその権限内で、北京行動綱領及びそのフォローアップの実施を評価し、前進を図るのを支援する。

(f) 政府の要請があった場合、政府がジェンダーの視点を開発の一つの側面として、国家開発計画に組み入れることを支援する。

(g) 締約国の要請があった場合、女性差別撤廃条約の履行能力の開発に向けてこれらの国を支援し、またこれに関連し、締約国が女性差別撤廃委員会の一般勧告と同時に最終コメントに注意を払うことを奨励する。

(a) 政府の要請があった場合、政府が援助の実施や、適当な場合には、武力紛争や自然災害がもたらす人道への危機に対応する際に用いる、ジェンダーに配慮した戦略を策定することを支援する。

(b) 紛争の防止・解決、紛争後の再建、平和建設、平和維持、平和構築を始めとする開発活動や平和プロセスのあらゆるレベルで、意思決定や実施過程への女性の全面的参加を確保・支援し、またこれに関し、女性団体や地域に根差した組織、NGOの関与を支援する。

(c) あらゆるレベルの意思決定への女性の関与を奨励するとともに、特使や特別代表として、そして特に、平和維持、平和構築及び常駐調整官などの業務活動に関連して事務総長に代わって周旋する場合などを含め、女性及び男性の任命に当たっては、公平な地理的配分の原則を十分尊重のうえ、女性と男性の均衡を実現させる。

(d) 適切な場合には、平和維持活動のあらゆる関係者に対し、特に女性や少女の、性的暴力を含む暴力被害者に対応するためのジェンダーに配慮した研修を行う。

(e) 人々、特に植民地下や他国による占領下で暮らす人々の自決権の実現に向けて、依然としてこうした人々の経済的・社会的開発に悪影響を与えている障害を排除するため更に効果的な対策を講じる。

(a) 女性ネットワークや国連機関の活動への支援を含め、女性や少女に対するあらゆる形態の暴力の根絶を目指す活動を支援する。
(b) 女性に対する暴力に対し、これを一切容認しない(ゼロトレランス)国際キャンペーンの実施を検討する。

 専門職やそれ以上のレベル、特に、平和維持使節団や和平交渉団、及びあらゆる活動における事務局上層部を含むあらゆるポストの男女比を、50対50とするという目標を達成するための実施を措置し、適当な場合にはその結果を報告し、管理に関する説明責任の仕組みを強化することを奨励する。

 女性の全面的な参加のもとに、あらゆるレベルで世界平和の実現・維持につながるような環境を創出する対策を講じ、国連憲章や国際法に準じ、国家の主権、領土保全、政治的独立、及び国内管轄事項不干渉の原則を全面的に尊重して、民主主義と紛争の平和的解決を実現するとともに、発展の権利を含むあらゆる人権及び基本的自由の保護・促進を図ることを目指す。

D 国内・国際レベルで取るべき行動

各国政府や国連システム、国際金融機関を含む地域・国際機関及び適当な場合、その他により:

 国際法及び国連憲章に違反するいかなる一方的措置も回避し、またそのような措置を差し控えさせる処置を講じる。それらの措置は、影響を被る国の国民、特に女性及び子どもの経済的・社会的開発の完全な実現を阻み、彼らの安寧を妨げ、健康と安寧を保障するに十分な生活水準の確保という万人に与えられた権利並びに食糧、医療及び必要な社会サービスを受ける権利を含む、人権の全面的享受に対し、障害を生み出している。食料や薬品を政治的圧力の手段に使ってはならないことを確認する。

 経済制裁が女性や子どもに与えるマイナスの影響を軽減するため、国際法に則って緊急かつ有効な措置を採る。

(a) ジェンダー関連の分析や統計の開発及び使用に向けた地域並びに国の取組を支援するための国際協力を促進する。とりわけ、国の統計担当部局が通常の戦略的な調査を実施できるよう、また、監視や政策・施策の影響評価のための、ジェンダーに敏感な統計指標を作成する際に、政府が使用する性別及び年齢別データの提供を統計担当部局が要請された場合、それに対応できるよう、同部局に対して要望に応じて、制度的・財政的支援を行う。

(b) 全ての国の全面的な参加の下、女性に対する暴力を測定する指標及び方法に関する国際的合意を醸成し、また女性移住労働者を始めとする女性に対するあらゆる形態の暴力に関し、容易に利用できる、統計、立法、研修モデル、良い事例、教訓及びその他の情報資料に関するデータベースの構築を検討する。

(c) 適切な場合には、関連機関との連携の下、HIV/AIDSの女性に対する生涯を通じた影響に関する包括的な情報を始め、保健及び保健サービスの利用についての性別、年齢別及びその他適切な要因別のデータの収集を促進し、改善し、体系化し、またそれに資金を提供する。

(d) 女性の人権を尊重し、国際的に受け入れられている法律、倫理、医療、安全及び科学の基準に厳格に従い、女性の参加を得た任意の臨床試験を実施することなどによって、生物医学、臨床及び社会研究におけるジェンダーバイアス(性別による偏り)を取り除く。また、避妊法や性感染症の予防法を始め、薬剤の適用量、副作用及び効用に関するジェンダー特有の情報を収集・分析し、また適正な機関及び一般の人が利用できるようにする。

(a) 政策策定者への情報提供、並びに行動綱領の完全実施及びそのフォローアップの促進を目的として、大学、国の研究機関や研修機関、その他関連研究機関がジェンダーに関連し、かつ政策志向の研究を実施できるよう、それら機関の能力を開発し、及び支援する。

(b) とりわけ、女性のエンパワーメント、ジェンダーに関する問題及び行動綱領の12重大問題領域に関するジェンダーの主流化のための方法論や取組に関して、国内本部機構の専門的知識、経験及び知識を共有することにより、女性を対象とした国内本部機構の能力開発を支援することを目的とした、南々協力のプログラムを開発する。

(c) タイムバウンドターゲット(期限付の目標)また/あるいは評価可能なゴール及びジェンダー影響評価を始めとする評価手法を以って、進ちょく状況の測定及び分析に対する女性の完全な参加を得て、行動綱領の完全実施を加速するための行動志向的施策及び措置を策定するための政府の取組を支援する。

(d) 先住民女性が利用でき、文化的にも言語的にも適切な政策、計画及びサービスを促進するために、先住民女性に関する適切なデータ収集や研究を、これら女性の完全な参加を得て実施する。

(e) 政策実行の基盤を提供するために、新たな男女の不平等を引き起こす可能性のある現在のあらゆる動向について、引き続き研究する。

(a) 女性の起業家精神や民間のイニシアティブを刺激することを目的とした、ジェンダーに敏感な施策を開発・実施するための措置を講じ、また女性が所有する事業がとりわけ国際貿易、技術革新及び投資に関与し、またそれらから恩恵を得られるよう支援する。

(b) 国際労働機関の職場における基本原則と権利に関する宣言及びそのフォローアップ文書に記載されている原則を尊重、促進、実現するとともに、特に女性の職場における権利確保に関係する国際労働機関条約の批准と完全実施の本格的検討を行う。

(c) 国際金融機関の支援等を通じて、既存あるいは新しいマイクロクレジット(少額融資)制度及びその足腰の強化を図って、自営業や所得創出活動のために必要な信用供与その他の関連サービスを受けられる貧困の中で生活する人々、特に女性の人数を増やし、適当な場合には他のマイクロファイナンス(少額財源手当)制度を開発する。

(d) ジェンダーに配慮した開発へのコミットメント(関与)を再確認するとともに、持続可能で生態学的に健全な消費・生産パターンや手法による天然資源管理に向けて、女性が果たす役割を支持する。

(e) 農山漁村の女性は食料の安定的生産や栄養の確保に極めて重要な役割を果たしており、彼女たちの経済的安定、生産要素・信用の仕組み及びサービス並びに給付へのアクセスやコントロールを行う機会、また彼女たちのエンパワーメントを高めるために、農業生産や、農業、漁業、資源を活用した事業や、内職など特にインフォーマルな分野に従事している彼女たちの働きがきちんと認識され、評価されるような対策を講じる。

(a) 公務員を十分にジェンダーについて敏感にさせるため、公務員研修カリキュラムの見直しを奨励・実施する。

(b) 若い女性が青年団体に参加するのを支援する制度を強化・推進し、先進国・途上国内及び先進国・途上国間の青年の対話を奨励する。

(c) 女性や少女を対象としたフォーマル・ノンフォーマル教育、指導・助言のプログラムを推進する国内取組を支援し、女性や少女が知識を獲得し、自尊心を育み、リーダーシップ、意見の主張、紛争解決に求められる技術を習得できるようにする。

(d) あらゆるレベルの女性や少女を対象とした技能訓練実施のための包括的活動に取り組み、国内及び国際的努力を通じて、貧困の撲滅、特に貧困の女性化への取組を行う。

(e) 先住民女性の完全で自主的な参加を得て、これら女性の歴史、文化、精神、言語、志を尊重する教育・訓練計画を作成・実施するとともに、先住民女性が高等教育を含むあらゆるレベルのフォーマル・ノンフォーマル教育を受けられるようにする。

(f) 国際協力により、国内、域内及び国際的な成人識字プログラムを引き続き支援・強化し、特に女性を中心として、2015年までに成人の非識字率を半減させ、あらゆる成人に公平に基礎教育と継続教育へのアクセスを保障する。

(g) 引き続き、一部諸国における初等・中等教育レベルでの少女・少年の入学率低下及び中退率悪化について検証し、関連する国際会議で設定された教育に関する国際的な目標の達成を視野に入れ、国際協力のもとに、根本原因を解決し、女性や少女の生涯学習を支援する適切な国内計画を策定する。

(h) 文化、娯楽、スポーツにおいて、また国内、域内、国際レベルのスポーツや体育活動の参加に当たり、これらへのアクセス、トレーニング、競技、報酬、賞などへの平等な機会を女性や少女に確保する。

(i) 女性のエンパワーメント及びあらゆる女性のあらゆる人権と基本的自由の完全実現を目指した行動綱領の実施に貢献するとともに、男女平等と女性によるあらゆる人権の完全享受が損なわれることがないような形での、文化的多様性の尊重及び文明間・文明内の対話の促進に向けての努力を継続する。

(j) 能力開発や訓練計画をあらゆる女性、特に先住民女性が平等に活用できるような積極的対策を適用・支援し、あらゆる分野、あらゆるレベルにおける意思決定へのこれら女性の参加の度合いを高めるようにする。

(a) 女性や子どものトラフィッキング、少女の間引き、名誉の名の下に行われる犯罪、熱情の名の下に行われる犯罪、人種を動機とする犯罪、子どもの誘拐や売買、持参金絡みの暴力や殺人、酸を使用した暴力、女性性器切除、早婚・強制結婚などの有害な伝統的慣習的慣行を含む、あらゆる形態の商業的性的搾取や経済的搾取を始めとする、女性や少女に対する暴力の根絶を目指し、協力、政策対応、国内法及びその他保護・防止策の効果的実施を推進する。

(b) レイプ、性的奴隷、強制的売春、暴力を受けての妊娠、不妊の強制その他の形態の性的暴力は戦争犯罪であり、一定の状況では人道に対する罪であるとした国際刑事裁判所ローマ規程についての認識と知識を広めて、このような犯罪の発生を防止し、犯罪にかかわった関係者全員の訴追を支援する措置を講じ、被害者に救済の道を開く。さらに、こうした犯罪がどの程度まで戦争の手段として利用されるかについての認識を深める。

(c) 特に地域や国際協力を通じ、国連機関と協力して女性団体や地域団体を含むNGOへの支援を行うことにより、女性や少女に対する人種や民族を根拠とした暴力と闘うプログラムなど、女性や少女に対するあらゆる形態の暴力への取組を推進する。

(d) 女性に対する暴力はあってはならないこと及び女性に対する暴力がもたらす社会的コストについての一般の意識を啓発するために、適切な場合には、一般に対するキャンペーン活動を奨励・支援する。また、男女平等に基づく健全でバランスの取れた関係を推進するための防止活動を実施する。

(a) 女性や子どもを始めとする人のトラフィッキングを防止し、抑止し、処罰するために、送り出し国、通過国、目的国の間の協力を強化する。
(b) 女性や子どもを始めとする人のトラフィッキングを防止し、抑止し、処罰するための、国連国際組織犯罪条約案(注16)を補足する、継続中の議定書草案交渉を支持する。

(c) 適切と認めた場合には以下の措置を採ることとする:難民・避難民を含む女性や少女及び女性移住労働者がトラフィッキングの被害者になるリスクを低減するための国内、地域、国際戦略を追求・支援する。トラフィッキング罪のあらゆる要素の定義付けを進め、それに従って処罰を強化することにより国内法を強化する。女性や子どもを始めとする人のトラフィッキングを防止・撲滅するため、社会・経済政策や計画及び情報・意識啓発の取組に着手する。トラフィッキングの加害者を訴追する。送り出し国、目的国におけるトラフィッキングの被害者を支援、援助、保護する対策を整備する。トラフィッキングの被害者が祖国へ帰還するのを容易にし、そうした人々が祖国に再度落ち着けるよう支援する。

(a) 女性が人権侵害にあった場合に受けられる救済についての知識や認識を深める。

(b) あらゆる移民女性の人権を保護・促進し、合法的移民女性については、その特有のニーズにこたえるために政策を実施し、必要に応じて、男女平等を確保するために、移民男女の間に存在する不平等に取り組む。

(c) 女性及び男性の思想、良心、宗教の自由に対する権利尊重を推進する。また、宗教や精神、信念が多数の女性及び男性の人生に果たしている中心的な役割を認識する。

(d) メディアその他の手段を通じ、一部の伝統的又は習慣的慣行が、HIV/AIDSその他性感染症への抵抗力を低めるケースも認められるなど、女性の健康に有害な影響を及ぼすことについて十分な認識を喚起することを奨励し、このような慣行の根絶に向け努力を傾注する。

(e) 女性の人権の保護・促進に携わる個人、グループ、社会的組織を保護するため必要な措置を講じる。

(f) 締約国に対し、引き続き条約体への報告書にジェンダーの視点を盛り込むよう奨励する。また、こうした条約体に対し、作業の不要な重複を回避する必要性を考慮しつつ、引き続きジェンダーの視点に配慮して、その機能を行使するよう奨励する。さらに、人権メカニズム(機構)に対し、その任務遂行に当たっては引き続きジェンダーの視点に考慮することを奨励する。

(g) 高齢女性のエンパワーメントを高めて、開発及び貧困撲滅に対する取組への貢献度を増すとともに、高齢女性がこれらの取組の成果の恩恵に浴すことができるような革新的計画を支援する。

(a) とりわけ、適切な場合には、教育機関、人権機関、市民社会の関係者、殊にNGOやメディア・ネットワークと協力して、包括的な人権教育計画を推進し、特に女性や少女の人権に関するものを始め、人権文書に関する幅広い情報普及を確保する。
(b) 特に女性の人権を侵害する加害者に対し、訴追をする既存の仕組みを支援・強化し、不処罰を撤廃するような措置を講じる。

(c) 国際法や国連憲章の規定の侵害を排除する対策を講じる。こうした侵害の多くは、女性の人権の保護・促進に負の影響を与えるものである。

(d) 包括的にかつ粘り強く武力紛争の根本原因を探ると同時に、武力紛争が男女に及ぼす影響の違いも究明する。そしてこれらを踏まえて、特に女性や子どもを始めとする一般市民の保護を強化するための関連施策や計画を策定する。

(e) 後日収監された者を含む武力紛争の人質、特に女性と子どもを解放するようにする。

(f) 戦時下の子ども、特に少女を保護する政策や計画を策定・支援し、あらゆる関係者による子どもの強制徴用・利用を防止し、子どものリハビリや子どもが自分を取り戻す制度を推進・強化する。この時、少女特有の体験やニーズを勘案する。

(g) 難民・避難民の女性など、紛争の影響を受けた女性の能力を、特に、そうした女性を人道的活動の立案や管理にかかわらせることにより改善し、また向上させ、こうした女性が男性と平等の土台に立って人道的活動の恩恵を受けるようにする。

(h) 国連難民高等弁務官事務所その他関連の国連機関はそれぞれの権限内で、またその他関連の人道機関や政府は、難民や避難民の女性や子どものニーズに特に配慮し、その保護や援助に努めている大量の難民・避難民受入れ国に対し、十分な支援を継続するよう、これら機関・政府に要請する。

(i) とりわけ、平和の文化に関する宣言及び行動計画(注17)を完全実施し、平和推進への女性の完全かつ平等な参加を実現するよう努める。

(j) 紛争下や紛争後の家庭にあって、家族の安定要素として重要な役割を果たしている女性を支援し、また力をつけ(エンパワー)させる。

(k) 軍縮に関して国連が定めた優先順位に基づき、厳格かつ有効な国際的管理の下で全面完全軍縮に向けての努力を強化し、その結果余った資源を、女性や少女に資する社会・経済計画に特に振り向けるようにする。

(l) 社会・経済開発、特に女性の地位向上のために追加資金の配分ができるよう、国家安全保障の要件を考慮に入れつつ、中でも世界の軍事費への投資を含む、過度な軍事費、武器貿易、武器生産・武器取得への投資の妥当な削減を通じて、公共及び民間の新財源を生み出す新たな方法の模索に着手する。

(m) 難民、特に女性や少女を保護し、彼らが教育や保健を始め、ジェンダーに配慮した適切な基本的社会サービスにアクセスし、その提供を受けられるような対策を講じる。

(a) メディアや情報業界に対し、表現の自由に矛盾しない範囲で男女の固定的役割分担意識を払拭し、バランスの取れた男女の描写を進めるための行動規範、職業上の指針その他自主規制型の指針を採用し、又は策定することを奨励するなどして、男女が生産者及び消費者として特に情報通信技術分野への平等なアクセスを確保できるよう、国内・国際レベルで、民間部門の関係機関やメディア・ネットワークと協力する。

(b) 特に、新情報通信技術の活用を通じ、女性がネットワークを構築・推進し、ネットワークにアクセスできるよう、その能力開発を支援する計画を策定する。この点における、女性NGOの能力開発プログラムの開発及び支援も含まれる。

(c) 男女平等・開発・平和の実現に関する「女性の視点からの歴史(Herstories)」(注18)など、女性の体験についての情報や、研究、長所や教訓の世界的な共有を一層進めるため、インターネットなどの新しい情報技術に資本を投入するとともに、新技術がこうした目標達成のために果たしうるその他の役割について研究する。

(a) 国際経済政策の決定過程への開発途上国の効果的な参加を高めることにより、グローバリゼーションの課題への効果的な取組を行い、とりわけ途上国の女性を始めとする女性が、マクロ経済政策の決定過程へ平等に参加できるよう保障する。

(b) 女性が全面的かつ効果的に参加し、グローバル化した世界経済への開発途上国の参加を増やし、かつ開発途上国が効果的に参加・統合されることにより、安定、成長、平等に基づいた国際開発協力への新しい取組が、人間を中心とした持続可能な開発の実現という全体の枠組みの中で、貧困撲滅、ジェンダーに基づく不平等の削減に向かうようにする。

(c) 女性の全面的かつ効果的な参加を得て、貧困の女性化を改善し、女性の能力を向上させ、グローバリゼーションによる社会的・経済的な負の影響に立ち向かえるように女性に力を付与するような貧困撲滅戦略を立案・強化する。

(d) 貧困撲滅計画の実施へ一層の努力を行うとともに、女性の参加を得て、質の高い訓練・教育、心身両面のヘルスケア、雇用、基本的社会サービス、相続、土地の利用・管理、住宅、所得、マイクロクレジット(少額融資)その他の金融商品・サービスなどへ、どれだけアクセスしやすいかとの観点から、これら貧困撲滅計画が貧困の中で暮らす女性のエンパワーメントにどの程度力となっているかを評価し、その評価を参考にして貧困撲滅計画に修正を加える。

(e) 男女平等と貧困撲滅が相互補完的な関連性にあることを踏まえ、適切な場合には、市民社会と協議の上、社会的、構造的、マクロ経済的問題を対象とした、ジェンダーに配慮した包括的な貧困撲滅戦略を立案・実施する。

(f) 適当な場合には民間の金融機関と協力し、「貸付制度」、その他あらゆる女性の預金、信用、保険のニーズにかなうように特に考えられた、手続きが簡単で利用可能な金融サービスの設立を奨励する。

(g) 女性や少女の全面的かつ効果的な参加を得て策定された戦略に基づき、あらゆるレベルの女性や少女に対し質の高い技能訓練を実施し、またそれを支援するような包括的活動を展開して、国内、域内及び国際的努力により貧困撲滅とりわけ貧困の女性化を一掃するという合意目標を達成する。このため国はリスクに立ち向かい、課題を克服し、グローバリゼーションがもたらす機会が、特に開発途上国の女性に利益をもたらすことができるよう、強力な地域協力や国際協力によって国の取組を補完する必要がある。

(h) 女性の全面的・効果的な参加の下、時宜にかなった方法で市民社会、特にNGOと協議しつつ、構造調整プログラムや貿易自由化が女性に及ぼす負の影響や、貧困の中で暮らす女性が負っている不均衡な負担を軽減するため、適切な場合には、社会開発基金を設定する。

(i) 特に、ODAの債務帳消しの可能性も含めた債務救済等、後発開発途上国を含む途上国の対外債務や債務能力の問題に対し、ジェンダーの視点を組み入れた開発志向型でかつ永続性のある解決策を見出して実施し、女性の地位向上を含む、開発を目的とした計画やプロジェクトへの資金の割り振りが可能となるよう、それらの国を支援する。

(j) ケルン債務削減イニシアティブ、特に拡大HIPC(重債務貧困国)イニシアティブの早期実施を支持し、その実施のために十分な資金を手当てするとともに、これにより節減となった資金が、ジェンダーの側面に配慮した貧困削減計画の支援に使われるようにする。

(k) あらゆる人々、特に女性や少女に完全に資することを目的に、ジェンダーの視点を統合する20/20イニシアティブの実施を推進し促進する。

(l) 先進国の国民総生産の0.7%を政府開発援助全体に充てるよう努力するといういまだ達成されていない国際的合意目標の、できるだけ早期の実現に向けた努力の再確認等を行い、男女平等、開発、平和への資源の流れを増加するよう、国際協力の継続を要請する。

(m) 途上国及び移行期経済の国に対し、新しい現代技術を始めとする適正技術の移転を促進し、男女平等、開発、平和の目標達成の速度を上げるために、国の取組を補足する効果的な手段として、かかる移転に対する制限撤廃措置に向けての国際社会の取組を奨励する。

(n) 国連ミレニアム総会準備委員会に対し、国連におけるジェンダー主流化の方針に基づき、貧困撲滅の検討を含む、ミレニアム総会やサミット関連のあらゆる活動や資料に、ジェンダーの視点を組み入れることを勧告する。

(o) 男女平等、開発、平和を実現する努力の一環として、あらゆる人権 ― 発展の権利を含む、市民的、文化的、経済的、政治的、社会的権利 ―及び基本的自由の享有を保護・促進する環境を整えるとともに、そうした政策を策定・実施する。

(a) 女性NGOがその開発活動を持続的に行うのに必要な諸資源を動員できるよう、国内法にのっとって、これら団体の能力を支援できるような環境を創出し強化する。

(b) 第4回世界女性会議の目標を支援するため、NGO等関連の市民社会、民間部門や労働組合、女性団体その他のNGO、通信、メディア・システム等の参加のもと、国際的組織や政府間組織のあらゆるレベルにおいて、複数の関係方面とのパートナーシップ・協力関係を構築し強化することを奨励する。

(c) 女性や少女に焦点を合わせた貧困撲滅イニシアティブを支援するため、各国政府、とりわけ国際金融機関、多国間機関といった国際機関、民間部門の機関、特に女性団体や地域に根ざした組織といったNGOを含む市民社会相互のパートナーシップや協力を奨励する。

(d) 持続可能な環境・資源管理の仕組み作り、計画、基盤整備の開発・設計・実施にジェンダーの視点を統合することにより、アジェンダ21(注19)の実施に女性及び女性のNGO及び地域に根差した団体が果たす極めて重要な役割を認め、これら団体を支援する。

(a) 高齢女性の自立、平等、参加、安全確保を重視した、健康で活発な高齢者向けプログラムを推進し、高齢女性のニーズを踏まえた、ジェンダー特有の研究やプログラムを実施する。

(b) 感染被害の大きい国では特に優先事項として、また可能な場合にはNGOとの連携の下、あらゆる年齢の女性をHIVその他の性感染症から保護する教育、サービス、地域動員戦略への取組を進める。そのために性感染症やHIV/AIDSを防止する殺菌剤や女性用コンドームといった方法など、安全かつ廉価で、効果があり、簡単に入手できるような、女性がコントロールする方法の開発、任意かつ守秘が保障されたHIV検査やカウンセリングの実施、性的抑制やコンドームの使用を含む、責任ある性行動の奨励、性感染症を対象としたワクチンの開発、簡単で廉価な診断法、単回投与の治療の開発などの措置を採る。

(c) HIV/AIDS及びそれに伴う結核等の日和見感染など、性感染症に感染したり、命を脅かす疾病に罹患している、あらゆる人々、とりわけ女性や少女に、適切かつ廉価な料金での治療、モニター、看護を受ける機会を提供する。妊娠期間中や授乳期を含め適切な住宅や社会的保護などを含む諸サービスを提供し、HIV/AIDSの流行で孤児になった少年少女を支援し、HIV/AIDSなど、重病人の介護にかかわる女性やその他の家族に対するジェンダーに配慮した支援システムを整備する。

(d) 世界で発生している麻薬の問題の様々な側面が女性や少女に及ぼす影響に関して、世界及び国内の世論を活性化させる効果的かつ迅速な措置を講じ、そのために十分な資源が割り当てられるようにする。

 21世紀に向けて男女平等、開発、平和を推進するため、第4回世界女性会議その他の国連主催による世界会議やサミットで表明されたコミットメント(誓約)の実施に向けて政府とNGOのパートナーシップを促進する。

出典 http://www5a.biglobe.ne.jp/‾elife/ginwel902.htm


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