University of Minnesota Human Rights Center

スポーツにおける反アパルトヘイト国際条約(抄)(スポーツ反アパルトヘイト条約)

 

 

 

 

 

採択 一九八五年12月一〇日

国際連合総会第四〇回会期決議四〇/六四G附属書

日本国 効力発生 一九八八年四月三日

 

前文(略)

 

第一条 定義

この条約の適用上、

(a) 「アパルトヘイト」とは、南アフリカが追求しているように、一の人種的集団が他の人種的集団に対する支配を確立し及び維持し並びに体系的に抑圧することを目的とする画一化された人種的隔離及び差別の制度をいい、また、「スポーツにおけるアパルトヘイト」とは、職業家向けに計画されたものであるか非職業家向けに計画されたものであるかを問わず、スポーツ活動にそのような制度の政策及び慣行を適用することをいう。

(b) 「国のスポーツ施設」とは、政府の後援の下に行われるスポーツ計画の枠内で運営されるスポーツ施設をいう。

(c) 「オリンピック原則」とは、人種、宗教又は政治的提携を理由とする差別は許されないという原則をいう。

(d) 「スポーツ契約」とは、スポーツ活動を組織し、主催し、実行し又は派生的権利を得る(役務の提供を含む。)ために締結する契約をいう。

(e) 「スポーツ団体」とは、国内の段階でスポーツ活動を組織するために設立される団体(国内オリンピック委員会、国内スポーツ連盟又は国内スポーツ管理委員会を含む。)をいう。

(f) 「競技団」とは、他の運動選手の集団と競争するスポーツ活動に参加するために組織される運動選手の集団をいう。

(g) 「運動選手」とは、個人又は競技団としてスポーツ活動に参加する男女、並びに、競技団の運営にとってその役割が不可欠な監督、技術指導者その他の役員をいう。

 

第二条 スポーツにおけるアパルトヘイトの撤廃

 締約国は、アパルトヘイトを強く非難し、かつ、あらゆる形態のアパルトヘイトの慣行をスポーツから撤廃する政策をすべての適当な手段により直ちに追求することを約束する。

 

第三条 アパルトヘイト国とのスポーツ交流の禁止

締約国は、アパルトヘイトを実施している国とのスポーツ交流を許さず、かつ、自国のスポーツ団体、競技団及び個々の運動選手がそのような交流をしないよう確保するために適当な行動をとる。

 

第四条 禁止措置

締約国は、アパルトヘイトを実施している国とのスポーツ交流を防止するためにすべての可能な措置をとり、かつ、そのような措置を遵守させるための効果的な手段が存在することを確保する。

 

第五条 援助の拒否

締約国は、自国のスポーツ団体、競技団及び個々の運動選手がアパルトヘイトを実施している国における又はアパルトヘイトに基づいて選ばれた競技団若しくは個々の運動選手とのスポーツ活動に参加することを可能ならしめる財政上その他の援助を与えることを拒否する。

       

第六条 国内措置

締約国は、アパルトヘイトを実施している国における又はアパルトヘイトを実施している国を代表する競技団とのスポーツ活動に参加する自国のスポーツ団体、競技団及び個々の運動選手に対して適当な行動をとる。その行動は、特に次のものを含む。

(a) そのようなスポーツ団体、競技団及び個々の運動選手に対していかなる財政上その他の援助を与えることをも拒否すること。

(b) そのようなスポーツ団体、競技団及び個々の運動選手が国のスポーツ施設に出入りすることを制限すること。

(c) アパルトヘイトを実施している国における又はアパルトヘイトに基づいて選ばれた競技団若しくは個々の運動選手とのスポーツ活動を含むすべてのスポーツ契約を執行しないこと。

(d) そのような競技団及び個々の運動選手に対しては国の栄誉又はスポーツ賞を拒否し及び撤回すること。

(e) このような競技団又は運動選手のための公式招待会を拒否すること。

 

第七条 査証、入国の拒否

 締約国は、アパルトヘイトを実施している国を代表するスポーツ団体、競技団及び個々の運動選手に対して査証及び(又は)入国を拒否する。

 

第八条 国際団体、地域団体からの除名

締約国は、国際的及び地域的スポーツ団体からのアパルトヘイトを実施している国の除名を確保するためにすべての適当な行動をとる。

 

第九条 国際団体による罰則の防止

締約国は、国際連合決議、この条約の規定及びオリンピック原則の精神に従って、アパルトヘイトを実施している国とのスポーツに参加することを拒否している加盟団体に対して、国際スポーツ団体が財政上その他の罰則を課すのを防止するためにすべての適当な措置をとる。

 

第一〇条 オリンピック原則の遵守

1 締約国は、不差別のオリンピック原則及びこの条約の規定の普遍的遵守を確保するためにあらゆる努力をする。

2 このため、締約国は、南アフリカにおけるスポーツ競技に参加する又は参加した競技団の構成員及び個々の運動選手が自国へ入国するのを禁止し、また、アパルトヘイトを実施している国を公式に代表しかつその国の国旗を掲げて参加するスポーツ団体、競技団の構成員及び個々の運動選手を自己の発議で招待するスポーツ団体の代表、競技団の構成員及び個々の運動選手が自国へ入国することを禁止する。締約国は、また、アパルトヘイトを実施している国を代表しかつその国の国旗を掲げて参加するスポーツ団体、競技団又は運動選手とスポーツ交流を維持するスポーツ団体の代表、競技団の構成員又は個々の運動選手の入国を禁止することができる。入国禁止は、スポーツにおけるアパルトヘイトの撤廃を支持する関連スポーツ連盟の規則に違反するものではなく、また、スポーツ活動への参加にのみ適用する。

3 締約国は、国際スポーツ連盟の自国代表に対して上記の2にいうスポーツ団体、競技団及び運動選手が国際スポーツ競技会に参加するのを防止するためにすべての可能なおよび実際的な措置をとるよう助言し、また、国際スポーツ団体の自国代表を通じて次のためにあらゆる可能な措置をとる。

 (a) 南アフリカがなお会員であるすべての連盟から同国の追放を確保すること、並びに、南アフリカが追放された連盟の会員に復帰するのを拒否すること。

 (b) アパルトヘイトを実施している国とのスポーツ交流を容認している国内の連盟の場合には、国内の連盟に対して制裁(必要ならば、関係する国際スポーツ団体からの追放、及び、その代表の国際スポーツ競技会への参加の排除を含む。)を課すること。

4 締約国は、この条約の規定の著しい違反の場合には、適切と考える適当な行動、(必要な場合には、当該国の責任のある国内スポーツ管理機関、国内のスポーツ連盟又は運動選手を国際スポーツ競技会から排除するための措置を含む。)をとる。

5 特に南アフリカに関する本条の規定は、アパルトヘイトの制度が同国において廃止された時に、適用を終了する。

 

第一一条 スポーツ反アパルトヘイト委員会

1 スポーツにおける反アパルトヘイト委員会(以下「委員会」という。)を設置する。委員会は、締約国の国民の中から締約国により選出される一五人の徳望が高く、かつ、アパルトヘイトに対する闘いに参加している者で構成する。その選出に当たっては、特にスポーツ行政に経験を有する者の参加に注意を払い、委員の配分が地理的に最も衡平に行われること及び主要な法体系が代表されることを考慮に入れる。

2〜6 VI5第一七条2〜5、7と同じ。

7 V5第八条6と同じ。

 

第一二条 締約国の報告義務

1 締約国は、条約の効力発生後一年以内に及びその後は二年ごとに、この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する。委員会は、締約国に対し追加の情報を要請することができる。

2 委員会は、その活動につき事務総長を通じて毎年国際連合総会に報告するものとし、また、締約国から得た報告及び情報の検討に基づく提案及び一般的な性格を有する勧告を行うことができる。これらの提案及び勧告は、当該締約国から意見がある場合にはその意見とともに、委員会の報告に記載する。

3 委員会は、特に、この条約の第一〇条の規定の実施を検討し、とるべき行動につき勧告する。

4 締約国の会合は、この条約の第一〇条の規定の実施に関する行動を審議するために、締約国の過半数の要請により国際連合事務総長が招集する。この条約の規定の著しい違反の場合には、締約国の会合は、委員会の要請により国際連合事務総長が招集する。

 

第一三条 委員会の権限

1 締約国は、この条約の規定の侵害に関する苦情で同様の宣言を行った締約国が送付するのを委員会が受理しかつ検討する権限を有することを認めることを、いつでも宣言することができる。 委員会は、侵害についてとるべき適当な措置を決定することができる。

2 本条1に従って苦情が申立てられた締約国は、委員会に代表を出席させ及びその議事に参加する権利を有する。

 

第一四条 会合、手続規則 (略)

第一五条 本条約の寄託者 (略)

第一六条 署名、批准、受諾、承認 (略)

第一七条 加入 (略)

第一八条 効力発生 (略)

第一九条 紛争の解決 (略)

第二〇条 改正 (略)

第二一条 脱退 (略)

第二二条 正文 (略)

 

出典 東信堂 「国際人権条約・宣言集 第三版」より抜粋・編集

 

 

 


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